第43話-c 櫻木と西野

俺と真奈美は、ルームを抜け出して喫煙スペースに来ていた。

仕組んで隣同士にした2組も気になるが、一方で余り物同士になってしまった1組への申し訳なさを感じながら、もくもくと煙を吐き出していた。


「なあ」

「んー?」

「そっちって誰か、仕込み感づいてるか?」

「全員じゃない? 実際私たちが隣同士になったの、イカサマだし」

「いや、そっちじゃなくて、そもそもカラオケ屋でバッタリ出会ったの」

「んー、凛音はワンチャンあるかな。なんで?」

「和泉にソッコーでバレた」

「何て言ってた?」

「『ありがとうございます』」

「あっはっはっは、いい後輩じゃん。ならバレてもよくない?」

「和泉にバレる分にはいいけどさ、広橋とか三尋木とかに気づかれると色々不都合じゃん? 女子ってなんか運命的なやつ好きでしょ」


いかにもステレオタイプ的な女子への印象を語ると、真奈美は「皆が皆そうとは思うなよ」と言わんばかりに勢いよく煙を吐き出した。

「そういうものなのか」と思うと同時に、「真奈美も違うのだろうか」と少し不安になる。


「ま、実際文とかは感づいても知らないフリしてくれそうだけどね。ていうかアレ、むしろ利用する気満々だよね」

「あれ、知ってたのか」

「話によく出てくるからねー。その時の目、キラキラしてたし」

「なるほどねえ。慎吾も知ってたんだ」

「まあな。バッシーの好みは色々教えてやった」

「恋のキューピッドですなあ」

「よせよ、そんなタマじゃねえわ」


軽く茶化してくる真奈美が、2本目に火をつける。

あの部屋に戻る気は、まだないらしい。


「ねー、慎吾」

「ん?」

「今日、泊まりに行っていい?」

「いきなりだなあ」

「ダメ?」

「んなわけ」

「やった」


真奈美は一度タバコを口に咥えて煙を吸うと、俺と反対の手に持ち替える。

そのまましなだれかかってきた真奈美を抱きとめると、副流煙のアッパー攻撃を食らった。



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