第42話 不正抽選
歌い終わって女子グループ側に戻った真奈美に、広橋と七瀬が話しかけている。
「真奈美ってこういうの好きだったんだ、私たちには全然話してなかったじゃん」
「そーそー。櫻木さんと2人だけの共通趣味みたいな感じ出しちゃって」
「あんまり有名でもないし、みんな普通のJ-POP聴いてる感じだったから、あんま通じないかなって。ていうか宇多田と石橋もこういうの好きだから、歩が言ってることは的外れ」
三尋木は2つ隣から聞こえた情報をキャッチし、早速バッシーに問いかける。
「石橋さんと宇多田さんもこういうの好きなんですか?」
「そうそう。麻雀やってたらサクが曲流し始めて、俺もウタも『知ってる!』ってなったんよ」
「同じ大学で同じサークル入った奴3人が全員MIDORI好きは奇跡よな。誕生日も1週間以内に3人固まってるし。俺とサクとバッシー、前世で三つ子か、最低でも兄弟だろって感じよ」
「すごいですね、それ。なんかそこまで行くと運命って感じです」
「男同士で運命はちょっとキツいな」
「男同士だからこそですよ!」
鼻息が荒いぞ、三尋木。
君、まさかそっちもいけるクチなんじゃないだろうな。
「サク、連チャンで悪いけど3人で次やろうや」
「俺はいいけど、女子組先に歌わせて――」
「是非、聞きたいです!」
三尋木が目を輝かせてそんなことを言うもんだから、女子組は誰も反対しなかった。
歌い終わった後、三尋木と真奈美が拍手をくれた。
「石橋さん、めっちゃカッコよかったです!」
「マジ? 普段声汚いって言われるから、嬉しいわ」
「三尋木、俺とウタも褒めてくれよ」
「すみません、宇多田さんもカッコよかったですよ!」
「ちょいちょいちょいちょい、俺、俺」
「さー、私たちも歌おっか!」
「おかしい、こんなことは許されない……」
「慎吾もカッコよかったよー。よしよし」
肩をがっくり落とした俺の背中を、真奈美が隣まで来てさすってくれた。
撫でやすいように首を垂れたが、「調子に乗るな」と叩かれてしまう結果に終わった。
持ち回りで何曲か歌っていき、3周したところでそろそろ頃合いだと俺と真奈美が席替えを提案する。
即席クジを作って、男女交互に座らせる。
当然だが、クジには細工がしてある。
左から順に七瀬、ウタ、真奈美、俺、三尋木、バッシー、広橋、和泉になるように細工したものえお事前に用意して、今しがた作ったダミークジとすり替える。
見事に狙い通りの席順になったが、俺と真奈美が隣同士なことに不正を疑う声がウタとバッシーから上がった。
しかし、三尋木の上目遣いで「石橋さんは、私の隣じゃ嫌ですか」という言葉がバッシーの意見を翻させ、無事賛成多数でこの席順で決定となった。
三尋木、やっぱ恐ろしい女だよ、君。
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