第40話 April-born Quartet (Half-Single and Half-Couple)

真奈美と付き合い始めて、2週間が経った。

サークルには既に俺と真奈美が付き合っていることは知れ渡っており、それをいじってきたウタとバッシーが俺を通じて真奈美と仲良くなった。

「サクとタメ口なら俺らともタメ口でいい」とのことで、真奈美の敬語が取れる相手が2人追加された頃。

休日の朝、俺の家でNBAファイナルの観戦をするべく集まっていた4月上旬生まれ4人組だったが、4勝0敗で優勝チームが決まってしまった。

結果はわかりきってはいたが、やっぱりワンサイドゲームは冷める。

なんともいえない感じをニコチンとアルコールで誤魔化そうとしている最中、バッシーの一言が空気をがらりと変えた。


「合コンがしたい」

「は?」


目の前の友人バッシーから発せられた言葉の意味を、一瞬理解できなかった。


「合コンがしてえんだよ」

「すりゃいいじゃん」

「それでできたら苦労しねえよ」


俺には意味がわからないが、ウタはウンウンと頷いている。


「合コンやるにしても、俺には真奈美がいるし、参加しないぞ」

「私も、慎吾がいるからパスで」

「違う違う、サクと西野で集めんだよ」

「「は??」」


俺と真奈美が、全く同時に同じ言葉を発した。

冗談じゃない、なんで彼氏彼女持ちが合コンに行くんだよ。


「サクが俺ら含めたフリーの男子を集めて、西野がフリーの女子を集める感じよ。俺らが2人分出すから、サクと西野はタダで好きなだけイチャつけばいい」

「えぇー……」


正直、面倒くさい。

女子側からしたらいい迷惑だろうし、結局カップルが成立しなければ気まずいのはこっちだ。


「そもそもさ、いねえのかよ。いい感じになってる女子」

「いるわけねえだろ」


バッシーが即答した。


「ウタは?」

「俺は、まあ……いるけど」

「「は?」」


今度は、俺とバッシーが同時に言葉を発した。


「さっきウタ、合コンできりゃ苦労しないって言った時、頷いてたじゃん」

「それはそれ、これはこれ」

「相手、誰だよ」

「バイト先の先輩。サークルも学部も違うけど」

「マジかよ、知らんかったぞ……」

「教職の講義も取ってるせいで、3セメ始まってから麻雀以外で喋ってねえからな、しょうがない」

「あー、そういやそうか。サークルも片方しか来れてないしな」

「そういうこと。4セメまでは忙しいのよ」

「じゃあ合コンも来れないな。その先輩もいることだし」

「それは違う。合コン行ってその先輩がどういう反応するかで、ちょっと探りを入れたい」

「うわ、ひっでえ」

「駆け引きだよ、駆け引き。つーわけでサクと西野よろしく」

「いや、俺はやらんぞ」

「私もやらない。別にイチャつくなら今だってできるし。ねー?」

「なー」


ウタとバッシーを声で煽ると、真奈美を抱き寄せて視覚的にも煽る。

真奈美も、わざとらしく「きゃっ」なんて可愛い声を出して、俺の腰に腕を回した。


「あーあーあー見せつけてくれちゃって」





机に突っ伏すバッシーを眺めながら、とあるちょろウザ系後輩のために何かしてやってもよかったかな、と思った。




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