第37話 舞い上がり

あの後の女子ガチマッチで、真奈美は小刀さんのマークをものともせず、ダブルチームを食らってもなおシュートを決め続けるという、とんでもない活躍っぷりを見せた。


小刀さんは試合後何か真奈美と二言三言会話を交わすと、まっすぐ俺の方に歩み寄り、無言で俺の腹に一発を入れた。

理不尽な暴力に蹲っていると、頭上から真奈美の声がした。


「ごめんね、小刀さんには私がいっぱい迷惑かけたから」


真奈美は、俺が広橋を諦めさせてから改めて告白すると宣言した日の後のことや、試合後に付き合ったという報告をしたことを話してくれた。

いや、完全に真奈美が悪いじゃん。特にダル絡みしたくだり。原因は俺だけどさ。




頭に手が届かないので代わりに背中を撫でられていると、和泉と広橋と三尋木が話している様子が目に入った。


「……歩、次見つけられるかな」

「見つけられるといいけどな」

「こないだ写真回ってから女子人気高いし、和泉くん狙いだとしたら、けっこう難易度高そう。学部でも人気あるかもだし」

「そっちは心配いらない。なんせ和泉の代は女子率2%だぞ」

「……嘘でしょ」


工学部の別名、オトコウガクブとはよく言ったもんだ。

特に女子率が低いのが、電気電子情報学科と、機械金属学科。だいたいどこの大学もそうだと思う。

俺の代の4%が低い低いと笑っていたら、和泉の代が2%と聞いて絶句した。

250人中4人だぞ、4人。7クラスあって、4人。

確定で女子ナシクラスが3つはヤバいだろ。


「まあ、サークル内女子人気高いってのも心配いらないだろうけど」

「ん? どういうこと?」

「あれ、真奈美は知らないんだっけ、やっべえ」

「……和泉くんって、まさか」

「まあ、うん。俺も知ったの確定飲みの時だけど」

「へぇー! そうなんだ!」

「つっても広橋が和泉に惚れるとは限らんから、そこは和泉が頑張るとこだよ」

「そうだね。私たちもアシストできればいいけど」

「俺はもうちょくちょくしてるぞ」

「あ、ずるい」


そこに嫉妬されても困るんだがな。

むくれる真奈美の頭をくしゃりと撫でた。


「先帰ってていいよ」

「わかった」


真奈美は更衣室へ向かう。

ここで真奈美を待っていても、結局お互いの家に一度は帰ることになる。

その間に色々買っておけというメッセージも含まれていそうだったので、俺は帰る前にスーパーと薬局を回ることにした。

その前に1ヶ所行っておかなきゃいけない店もある。9時閉店だった気がするから、早く行かないと。




この時、舞い上がり切っていた俺はすっかり忘れていた。





「……原付、パンクしてたんだった……」





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