第11話 爆撃&突撃 

打ち上げの一波乱から一夜明け。

ベッドで寝直した結果、見事に夕方までの爆睡をかましてしまった。

めでたく、昼夜逆転の始まりである。

どうせやることもないし、いいか――と、枕元にあるスマホを取る。

CROSSOVERのLINEグループでは昨日の写真が共有されているようなので、小刀さんが余計なことをしていないかとチェックしたところ、グループを開く前に別の通知に目が行った。

広橋歩からの、3件の不在着信。

トークルームを開いて、折り返すかどうか迷っていると、まるで既読がつくかを監視していたかのように、メッセージが届く。


【起きました?】


当然そのメッセージにも即座に既読がつくため、仕方なくイヤホンを装着し、通知ボタンを押す。


『もしもし。おはようございます』

「……おはよう」

『未読無視とかブロックされてなくて安心しました』

「しとけばよかったって思ってるよ。で、何の用」

『声、聞きたいなあって』

「そうか、聞けてよかったな」


あちらの目的が達成されたようなので通話を切ると、即座に彼女から通話がかかってきた。


『なんで切るんですかあ!』

「寝起きでそんなテンションじゃねえんだよ」

『女子に言われたいセリフランキングじゃ、けっこう上位に入ると思うんですけどね』

「好きな子とか彼女に言われれば嬉しいけどな」

『西野さんに言われたら嬉しいんですか』


ここで「嬉しい」と答えるのは、何となくだが負けな気がした。

とはいえ次に発する言葉も思い浮かばず、しばしの沈黙が流れる。


『……まあ、どっちでもいいですけど。櫻木さん、明日デート行きましょう』

「よし、断る」


2分前と同じように通話を切ると、これまた2分前と同じように通話がかかってきた。

しつこい奴だなと思いつつ、放置すると延々と鳴らされそうなので、渋々もう1度出ることにした。


『なんでですかあ! どうせ暇なんでしょ! 女の子とのデートですよ! 来てくださいよ!』

「何がデートだよ。付き合ってもいないのにデートとは言わんだろ」

『女の子同士でもデートって言いますよ?』

「へー、そうですか」

『とにかく、明日11時に竹田のリトルマン前でお願いしますね』

「まだ行くとは言ってないんだけどな」

『来てくれなかったら家に押しかけますよ』

「俺の家知らないだろ」

『体売ってでも手に入れます』


マジでやりそうだからやめてくれ。

流石に脅迫レベルだぞ、それ。


仕方ない、1度くらいなら行ってやっても――

彼女の誘いを了承しようとする直前、玄関のチャイムが鳴らされた。


「悪い、聞こえたと思うけどちょっと来客。切るわ」

『ちょっ、返事――』


通販で何か物を買った覚えもないので、どうせ何かのセールスか、よく分からん宗教の勧誘だろう。ただ、さっきの窮地からの救世主の話くらいは聞いてやってもいいかなと思えた。


「はい、どちら様――」

「アポなしでごめんね、来ちゃった」


ドアを開けると、スーパーの袋を下げた真奈美が、申し訳なさそうに笑っていた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る