藤宮和雄 3


 父の命令で金を下ろした後、家に帰ると父が生真面目に電話をしていた。職場の上司からだろうか?などと思っていると父が電話を切り、こちらに顔を向けた。

「面白い話があるぞ」

 父は上ずった声で僕に話しかけた。

 なんだろうか。僕は不安を抱きながら父が話し出すのを待った。

「今な、お前が生まれた病院から電話があったんだ」

 病院からの電話?何か問題でもおきたのだろうか?

「俺とお前は、もしかしたら親子じゃないのかもしれないだと!」

 父は笑いながらそう答えた。

 雷に打たれた様な衝撃が体を走った。

 僕は突然降ってきた僥倖に理解が追い付かなかった。

「どうりで、おかしいなとは思っていたんだよ!俺の子のくせに細いし、顔もよく見たら似ていないじゃないか。これで今までの違和感の原因が分かったよ!あぁ早く俺の本当の息子に会いたいな!」

 父はすっかり饒舌になり、ご機嫌になっていた。まだ取り違えと確定したわけでもないのに、取り違えた前提で話していることや、本当の息子を楽しみにしているという内容をわざわざ大きな声で言ってくるあたり、どうなのかとは思うが、そんなことなど今はどうでもよくなっている。

 僕自身、取り違えだということを願っているのだから。

「来週DNA鑑定に行くぞ」

 弾んだ父の声が聞こえた。

 気が付けば、僕は来週が待ちきれなくなっていた。

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