二月五日(金)

 絵を描くのが好きで、授業中も俯いていることがほとんどだった。

 君は隣の席から、少し首を伸ばして覗き込んでくる。人の視線に気付きにくいから、君の方を横目で見るときには既に“もうしばらく見ているよ”という顔をしている。

 目というのは良い。描くのも好きだ。美術の時間のために買った、授業では少しも使わないスケッチブックのページを埋めていく。その多くが目だったりする。人に見せるほどのものではない。

 君の目は特別に綺麗だ。幅を保った二重、まつげの長さとその上向き具合、透けた茶色の瞳。できることなら見つめていたい。

「また描いていたでしょ、上手」

「別に何も」

「ふうん」

 閉じられたスケッチブックの中で、君を写し取った目が開いている。

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