写真の中だけは笑顔でいて

真島雪明り

第1話

がさがさという風の音、がたがたと誰かが開けようとしている様な扉の音、しきりにぶうぶうと鳴る携帯。


夜中1時10分。冷凍のミートソーススパゲティをチンして、汚れない様にラップを巻いた白い皿に乗せて、ラーメンの様にずるずる啜って口の中に入れる。

噛む度に細かくなっていくスパゲティの数を数える余裕がある程に暇だが、する事は溜まっていく。


提出期限の迫った数学プリントや風呂、何も終わってはいなかった。

ただ、眠たさだけを終わらせようとしていた時に、ふとカレンダーが目に入った。


3月12日 卒業式


あぁ、もうあと数日で卒業式だ。

忘れていた程に遠かった日は、もうあと数日で来てしまうのだ。

「三年間、何もできなかったな。」

風の音に消されそうなくらい小さな声で言う。

ぐるぐると頭の中に浮き出て来る後悔を消して、さっさと風呂に入る。

風呂に入っている時でもまた後悔が浮かぶ。

毎日めんどくさいと思いながら通ってきた学校が、急に恋しくなる。

何故だかわからないが、急に泣きそうになる。

それが、自分の不甲斐なさからなのか、三年間をもっと愛せなかったからなのか。色々な考えがぽつぽつと出てきた。


これ以上考えたくなかったから、さっさと風呂から出て、布団に入った。


明日こそ、愛せるように。


そう考えながら眠りについた。




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写真の中だけは笑顔でいて 真島雪明り @majima_yukiakari

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