第14話 そのザマは何よ?(1) —— sideマエリス
「マエリス? どうしたの?」
「う……うぅ」
「マエリス!」
目を開けると、私を心配そうに揺すっているカトレーヌさんがいた。
ここはある小さな街の宿屋。
カトレーヌさんは勇者パーティに参加している女性の一人だ。
私より四つ歳上で二十歳になる。
ショートカットがよく似合う可愛らしい人だけど、音もなく忍び寄って敵を倒す手際は怖いとすら思う。
「カトレーヌさん……ありがとう」
私は、夢を見ていた。
ああ、そうか……もう
私は涙を拭いた。
落ち着くまで、カトレーヌさんは私をぎゅっと抱き締めていてくれた。
「ふう、落ち着いたみたいね。そんなにリィト君がいなくなったのが寂しかった?」
「うん……。急にいなくなったし」
「やっぱりか。でも、挨拶もせずにいなくなるなんて、ちょっとおかしいわよね。アタシは……多分あのグスタフが追い出したんだと思ってる」
「やっぱり、そう思いますよね? でも、追い出すなんて」
「アイツならやりかねない。だいたいさ、アイツの目イヤらしいと思わない? 私や……マエリスのこともじっと見つめてるときがあってぞっとした」
あの、時々感じるいやな視線は、私の勘違いじゃなかったんだ。
「それに比べてリィト君は真面目だったよね。マエリスの幼馴染みなんでしょ?」
「はい。ずっと一緒にいたので、こうやって離れてしまうのが信じられなくて」
「だよね。リィト君の【清浄化】の魔法、すっごく気持ちよかったのになぁ——ん?」
「気持ち……よかったですか?」
「う、うん。なに? 怖い顔して?」
怖い顔……そういえば眉をひそめてしまっていたような?
「えっ? ご、ごめんなさい」
「ふふっ。気持ちいいって言っても、魔法の事よ? あれ気持ちよくない?」
そういって、カトレーヌさんはうっとりとした顔をした。
思い出しているのだろう。
こんな綺麗でプロポーションもいい人がそんな表情をしていると、私もどきどきしてしまう。
大人って感じがして頼りになって……綺麗で胸も大きくて……くっ。
「やっぱりグスタフの奴、リィト君を追い出したんだと思う」
「……むぅ。だとしたら、許せないです」
「うん。まさか、傷付けたり命を奪ったりは……アイツならやりそうだわ」
私はさっき、リィトが眠っているところを見ている。
無事なのは知っている。
それは嘘や幻ではない。
——と思う。
「多分、大丈夫だと思います」
「ふふ、マエリスが言うならきっとそうよね。王都に帰ったら、姫殿下に真っ先に伝えて、リィト君を連れ戻すようにお願いしよ?」
「え? 姫殿下ですか……? 力になって下さるのですか?」
カトレーヌさんは、口を開いて、えっ? という表情をした。
「はあ……グスタフは教えてなかったのか。そりゃ、リィト君もちょっとグスタフが強く言えば、出ていくはずだわ」
「どういうことですか?」
「あなたたちを辺境の街の孤児院でスカウトしたのは、姫殿下なのよ。マエリス、あなたとリィト君は間違い無く二人とも、重要人物として王都に招かれた」
「そうだったのですか? 姫殿下にはお目にかかったこともなくて、グスタフさんからも何も聞いていなくて。あの人は私は聖女で、リィトをお荷物だと言っていて」
王都に来てから、王家からの話は全てグスタフさんを通して聞いていた。
大切なことを、彼は教えてくれていなかったのだ。
「本当にお荷物なら、どうして勇者パーティに入れたりしたのか。魔術師なんて他にもいるのに、彼でなければならない理由は? まあ、それはアタシも知らないんだけど」
「そうだったんだ。やっぱり……そうだよね! リィトは、必要とされている。ううん、きっと、私よりもずっと、必要な存在なんだ」
リィトがここにいないのが悔やまれる。
あの時、グスタフさんにリィトが連れて行かれるとき、無理矢理にでもついていけばよかった。
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