第3話 冷蔵庫

昔から、冷蔵庫が怖かった。その不気味ないで立ちと時折聞こえる不気味な声。あの冷たい牢獄の中にモンスターがいるのではないかと、ずっと考えていた。

親には何かにつけて「こんどやったら冷蔵庫に入れるからね。」とよく叱られていた。

けれど、今はもう違う。もう大人だ。大学ももうすぐ卒業して来年から社会人だ。実家を離れて念願の一人暮らしをする。

不安だけれど一人じゃない。彼女もできた。とても無口でいつも顔色を変えずにいるけれど、そんな君がいつも好き。

「…だよね?」

男は冷蔵庫を開けた。白く小さな立方体の空間の真ん中には女性の生首が置かれていた。彼女は冷たく眠っている。

男は女性の生首を愛でた。髪の毛を触ったり、すっかり冷たくなった肌や瞳を指の腹でゆっくりと味わった。

氷漬けにされた時間がゆっくりと溶けていくようだ。ようやく肉体に潜む時計が時を刻み始めた。


チクタク、チクタク、チクタク…


そういいながら男はクローゼットから生首の無い女性の体を引っ張りだした。そしてそれを寝室まで運び、自分の横に寝かせた。

「君はいつ見ても魅力的な女性だね。」

そういうと男は胸にキスをした。

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呟怖 短編集 猫背街 中毒 @RRRism

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