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ティアナはむしゃくしゃしながら城で与えられている部屋に戻った。
部屋に戻ると、片づけたと思っていた書類仕事がまた積みあがっていて嫌になってくる。
せっかく夕方の勉強の時間までの余暇に、アランと散歩でもしようと思っていたのに、当のアランの機嫌が悪かったなんてついてない。それも、その原因がオリヴィアなんて――最悪だ。
(オリヴィア様がどうなろうと、アラン殿下には関係ないじゃない! わたくしがいるんだもの。それこそオリヴィア様なんかが死んだところで誰も困らないし)
今日に限らず、最近アランがおかしい気がする、
どうもオリヴィアのことを気にかけているようなのだ。
この前も、城のメイドに聞いたことによると、オリヴィアと二人で図書館にいたらしい。図書館だ。オリヴィアはともかく、アランが図書館。あんまり本が好きではないアランが、だ。
どう考えても偶然ではない。オリヴィアとともに図書館に向かったと考えるのが自然だった。
(どうしてよ! この前だって、エドワール王太子の目の前でオリヴィア様に恥をかかせてやったのに! 殿下だってあきれたはずでしょ? どうして逆に気にかけるの!)
オリヴィアがどれだけ馬鹿で、ティアナがどれだけ賢いか、わかったはずだろう。用意される書類仕事だってすぐに片付けることができている。王妃教育が必要ないとわかったのか、最近あの忌々しい王妃教育の教育官であるワットールは姿を見せなくなった。それもこれも、ティアナが王妃に足る教養を持っていると証明されたからだろう?
「もしかして、まだ足りないの?」
ティアナは爪を噛む。まだ、どれほどオリヴィアが無知で無能であるかの証明がたりていないというのだろうか。
確かに、エドワール王太子の歓迎パーティーの時に、オリヴィアの口からフィラルーシュ国の公用語が飛び出したのには驚いたが、あれはきっと「たまたま」だろう。あんなもの、ティアナだってちょっと本気になれば喋ることができるはずだ。
オリヴィアの評判をどん底まで落とすにはどうすればいいだろう。オリヴィアがどうしようもないほどの愚者だとわかれば、アランだって彼女を気にかけることはなくなるはずだ。
ティアナはしばらく爪を噛みながら考えて、そしてにんまりと笑う。
「いいこと思いついちゃったわ。やっぱりわたくしは、天才ね」
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