第38話

 スターダスト・ドラゴンを倒して、街まで戻ってきたとき、エンディングムービーが流れはじめた。


 本ゲームで2回目。

 三帝竜を倒したときに一度観ているが、今回の方がオーケストラの演奏が格好いい。


 これまで戦ってきたドラゴンの映像が流れてくる。

 チャット機能が健在なのをいいことに、思い出話に花を咲かせまくった。


 SATO:

『懐かしいです』

『最初はタイタン・ドラゴンにボコられましたね』

『もう3ヶ月も前なのですね』


 変態ライダー:

『あった、あった!』

『あの頃はびっくりするくらい弱かったな!』

『自分のヘボさに絶望していた!』


 SATO:

『その次に苦戦したのは……』

『イフリート・ドラゴンでしたね』


 変態ライダー:

『絶対に勝てる気がしねえ!』

『そう思ったからな〜』


 SATO:

『でも、勝てました』

『弱点を突くのって、大事ってやつですね』


 変態ライダー:

『SATOの作戦がハマったよな!』

『データ分析の威力を思い知ったわ!』


 SATO:

『その次に苦戦したアダマント・ドラゴン……』

『こいつの硬さには心を折られましたが……』


 変態ライダー:

『いやいや、英断だったよ』

『片手剣を捨てるという選択は……』

『俺1人なら、ずっと片手剣で挑んでいたね』


 SATO:

『他の武器に乗り換えるのって……』

『けっこう勇気が要りますからね』


 変態ライダー:

『なあなあ、SATOってさ……』

『戦斧以外に挑戦したい武器はある?』


 SATO:

『そうですね』

『双剣、ランス、太刀……』

『そこらへんに触れてみたいです』


 変態ライダー:

『ハンマーは?』

『(*´ω`*)モキュ』


 SATO:

『Wハンマーですか?』

『二郎インスパイア系ラーメンくらいの重量感ですね』


 変態ライダー:

『ww』


 サトルは手元のコーラを飲んだ。

 夏場の草むしり後に匹敵するくらい、炭酸のシュワシュワがおいしい。


 SATO:

『ライダーさんは、次にどんな武器を習得したいですか?』


 変態ライダー:

『う〜ん、大剣かな〜』

『技の種類が少ないから簡単そう』


 SATO:

『なるほど』

『ライダーさんらしい理由ですね』


 エンディングムービーに三帝竜が出てくる。

 見た目の格好良さなら、この3体が一番かもしれない。


 変態ライダー:

『三帝竜をやっつけたとき……』

『SATOは一皮むけた感じがあったよな』

『戦斧の操作、うめ〜な、て思ったもん』


 SATO:

『そうですか?』

『自分ではあまり気づきませんでした』


 変態ライダー:

『俺、ちょっと焦っていてさ』

『SATOがどんどん強くなるから……』

『上達しない自分にいら立っていた時期だわ』


 へぇ〜、知らなかった。

 ライダーさんに悩みがあったなんて。


 サトルはサトルで、攻略ペースが落ちたことに、大きな責任とプレッシャーを感じていた。


 これだけ一緒にプレイしているのに。

 相方の本音って、意外に気づかないものだ。


 SATO:

『おっ、二皇竜がきましたね』

『怒ったときのツクヨミ・ドラゴン、鬼畜でしたね』


 変態ライダー:

『もうね〜、あの頃はお風呂の中で泣いたよ〜』


 SATO:

『マジっすか⁉︎』


 変態ライダー:

『だって、死んだら悔しいもん!』

『でも、泣いたらね〜、やる気が不思議と湧いてくるんだよな、これが』


 SATO:

『ちょっと意外です』

『ライダーさんがゲームで泣くなんて』


 変態ライダー:

『いやいや!』

『ドラハンだから泣くんだよ!』

『ゲーム開発者に対する怒りみたいな!』

『強すぎじゃあ! ぼけぇ! あほぉ! という魂の叫び』


 SATO:

『なるほど笑』


 最後に出てきたのは七星竜の面々。

 シリウス、プロキオン、ベテルギウス、デネブ、アルタイル、ベガ。

 そして、スターダスト・ドラゴン。


 これはネット掲示板の情報なのだが、近いうちに色違いのドラゴン……既存ドラゴンの強化バージョンが実装されるらしい。


 だから終わりじゃない。

 まだまだ戦いは待っている。


 変態ライダー:

『やべぇ……』

『なんか涙が出てきそう』

『ゲームで嬉し涙とか、いつ以来だよ』


 SATO:

『俺もいま、瞳の奥がじ〜んとしています』


 変態ライダー:

『SATOは映画とかで感動しても……』

『絶対に泣かなさそうだけどな』


 SATO:

『いえいえ』

『小学生のとき、映画館で1回だけ泣きました』


 変態ライダー:

『1回かよ⁉︎』

『少ねえ!』

『ちなみに何で泣いたの?』


 SATO:

『ポケモンか、コナンか、そこらへんです』


 変態ライダー:

『ww』

『けっこう可愛いじゃん』

『((*´∀`))ケラケラ』


 ぷっち〜ん!

 相手がエリナと知っていても怒りを覚える。


 SATO:

『うるさいです』


 そうこうしている内に『The End』の6文字が表示される。


 ここから先は2人だけの約束。

 ラスボスを倒したら……の誓いを果たすときがやってきた。


 変態ライダー:

『あの……なんだ……』

『前にいった約束のこと、覚えているかな?』


 サトルは震える指でキーボードをタイプした。


 SATO:

『はい、覚えています』

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