第25話

 地震が収まってから数分後。


 互いの住所は告げなかった。

 それでもサトルとライダーさんの『出かけたことのある場所』が重なっているのは明白だった。


 SATO:

『我が家の場合、お正月には……』

『いつも決まった神社にいくのですけれども……』


 県下にある有名な神社の名前を出してみる。


 変態ライダー:

『ああっ! 知ってる! 知ってる!』

『並んだら甘酒を振る舞ってくれるところだ!』

『去年いったかな〜。今年はな〜』

『ちびっ子が風邪ひいて……』


 SATO:

『ちびっ子?』

『ライダーさんのお子さんですか?』


 変態ライダー:

『違う! 違う!』

『俺は独身だって!』

『アレだ……甥っ子とか姪っ子みたいな』


 SATO:

『ああ……』

『ちゃんと面倒をみるのですね』


 変態ライダー:

『おうよ』

『これでも子育てライダーよ』

『(*´ω`*)モキュ』


 とても意外だ。

 まさか子ども好きのおっさんだったとは。


 SATO:

『それって、ロリコンじゃないですよね?』

『ちゃんとした三次元の甥っ子、姪っ子ですよね?』


 変態ライダー:

『当たり前だよ!』

『架空の……て発想がなかったわ!』

『((*´∀`))ケラケラ』


 SATO:

『じゃあ、あそこは知ってますか?』

『牛の乳搾り体験できる牧場』


 県境にあるレジャー施設の名前を出してみる。


 変態ライダー:

『なついww』

『カピバラがいるところだろ』

『昔に学校の遠足でいった記憶があるな』


 SATO:

『はい? 遠足?』

『でも、カピバラが登場したの……』

『たぶん15年前とかなので……』

『ライダーさんの時代、いました?』


 変態ライダー:

『あれ……そうだっけ?』

『ふ〜ん、カピバラちゃん、15年くらい前なんだ』

『おかしいな〜、覚え違いかな〜』

『(:.;゚;Д;゚;.:)ハァハァ』


 なんだ、これ⁉︎

 メチャクチャ動揺してる⁉︎


 SATO:

『たぶん、アレでしょう』

『ヌートリアとか、チンチラとか』

『別のげっ歯類のことを、カピバラと勘違いしたのでは?』


 変態ライダー:

『そうかもしれん……』

『すまんな、この歳になると記憶が曖昧あいまいでな』

『┐(´ー`)┌ヤレヤレ』


 サトルの中にとある可能性が浮上した。


 実はライダーさん、20代もしくは30代前半じゃないだろうか。

 わざと年齢を10から20くらい水増ししているとか。


 だとしたら学校の遠足でカピバラを見ている可能性はある。


 よしっ!

 探ってみよう!


 SATO:

『あそこの遊園地、いったことあります?』

『来年からプロジェクトマッピングを取り入れる予定の』


 変態ライダー:

『あ〜、なつい』

『それも学校の遠足でいったな』


 SATO:

『俺も遠足でいきました』

『この辺りの学校じゃ、鉄板っぽいですね』


 変態ライダー:

『俺がいったときさ……』

『遊園地がオープンした翌年とかで……』

『あの頃は大変にぎわってたな〜』


 SATO:

『へぇ〜、いまは閑古鳥かんこどりが鳴いてますけどね』


 変態ライダー:

『いや、もうジェットコースターとかすごい行列』

『ゴーカートも大人気だったかな〜』

『1時間待ちとか、当たり前よ』


 SATO:

『景気がいい時代ですね』

『現在では5分待ちが当たり前です』


 変態ライダー:

『5分待ちは草』

『まあ、少子化だもんな』

『それに昔は娯楽が少なかったしな』


 やっぱり40代のおっさんだな。

 オープンしたての遊園地に入ったならそうなる。


 サトルは意識をゲーム画面に戻した。

 おしゃべりしている間も、着々と昆虫は集まっている。


『星くずバッタを入手しました』


 これは当たりの部類。

 売ってもいいし、装備の強化に充ててもいい。


『ヘラクレス3世を入手しました』


 皇帝みたいな名前のやつがきた。

 ゲーム開発者の人、遊んでいやがる。


『カイロス4世を入手しました』


 お前もか⁉︎

 名前を考えるの、面倒臭くなったのかな。


『バクダンホタルを入手しました』


 これは爆弾の材料になるやつだ。

 虫を原料にしてドラゴン退治の兵器をつくるって、冷静に考えたらシュールだな。


 変態ライダー:

『夏になったら今年も……』

『カブトムシを採りにいかないと』


 SATO:

『それって、リアル世界のカブトムシですか?』


 変態ライダー:

『おうよ』

『ちびっ子が喜ぶからな』

『近くの山まで捕まえにいくわ』


 SATO:

『いいですね、憧れます』

『ホームセンターで買ってきたカブトムシ……』

『元気がなくて、死にやすいんですよ』


 変態ライダー:

『もったいね』

『絶対、野生の方が強いぞ』

『元気モリモリだからね』

『└( ‘ω’)┘ムキッ!』


 いいな、昆虫採集。

 そういう体験がサトルにはない。

 両親はどちらも虫が苦手で、カブトムシにすら触れようとしなかった。


 でも、ライダーさんは違う。

 きっと、底抜けに明るくて楽しい家庭で育ったのだろう。

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