第24話

 それから数日間。


 サトルは絶好調をキープしていた。

 この状態をたとえるならば、人生の最盛期キター! という感じである。


 まずドラハンについて。

 伏見家にお邪魔した日の夜に、アダマント・ドラゴンを倒しておいた。


 これで五賢竜はコンプリート。

 四聖竜クリアから約2週間かかった計算になる。


 新しいエリア『氷山』と『奈落穴ならくあな』が解放された。

 さらなる強敵ドラゴン、六騎竜討伐クエストも追加された。


 この六騎竜、工夫すれば1週間でクリアできるのではないか? とサトルは見積もっていた。


 装備を強化させるのに1日。

 それから1日に1体のペースで攻略していく。


 結果として大的中だった。


 勝因はハンマー&戦斧の組み合わせ。

 別々の武器なので、互いの欠点をうまくカバーし合えるのだ。


「よしよし」


 2ヶ月くらいを見込んでいたラスボス攻略。

 この調子なら1ヶ月後には実現できそうだ。


 六騎竜の次に待ち構えているのは三帝竜さんていりゅう

『帝』と付くだけあって、サイズも、難易度も、六騎竜なんかの比ではなかった。


 原初竜げんしょりゅう……シャングリラ・ドラゴン

 天空竜てんくうりゅう……ヴァルハラ・ドラゴン

 終焉竜しゅうえんりゅう……ラグナロク・ドラゴン


 SATO:

『負けるの前提で……』

『1回ずつ挑んでみましょう』


 ライダーさんを誘ってトライしてみたが、結果は完敗。

 初見とはいえ、5分くらいで全滅させられた。


 まずパワーがヤバい。

 あらゆる攻撃が致命傷レベル。


 あとボディがデカい。

 これまで戦闘してきたドラゴンが、10mから15mくらいのサイズ感だとしよう。

 三帝竜は25mから30mくらいある。


 セオリー通りにヒット&アウェイしたくても、向こうの攻撃範囲が広いので、アウェイできずに無事死亡、みたいなことが起こるのだ。


 う〜ん。

 ドラゴンとしての次元が一段上だよな。


 SATO:

『というわけで、ライダーさん』

『いったん装備を鍛え直しましょう』


 変態ライダー:

『あいよ』

『今日は何すんの?』


 SATO:

『昆虫採集です』


 変態ライダー:

『あっはっは!』

『虫とり少年かよ!』


 新しく『空中庭園』というフィールドが解放された。

 ここにしか生息しないレア昆虫がたくさん存在するのだ。


 まずはアイテムポーチの整理。

 持てるだけ虫とり網を詰めておく。

 それが終わったら昆虫採集にレッツゴー。


 変態ライダー:

『こいつらの時代ってさ……』

『飛行機とかあるの?』


 SATO:

『エンジン付きの飛行機はないですね』

『グライダーはあるそうです』


 変態ライダー:

『マジかよww』

『この空中庭園、高さ100mはあるだろう!』

『俺たち、どうやって移動してきたんだよ⁉︎』


 SATO:

『上から梯子はしごロープを垂らしているか……』

『ドラゴンを飼い慣らして、背中に乗って飛んできたか』


 変態ライダー:

『完全にファンタジーだな』

『(・∀・)ニヤニヤ』


 そういう設定、サトルは気にしない派だけどな。

 ライダーさんは文明レベルとか意識する側の人間か。


 SATO:

『それをいったら、そもそも……』

『この空中庭園、どうやって浮いてんだ?』

『という話になりませんか?』


 変態ライダー:

『そりゃ、あれだよ』

『ラピュタの飛行石みたいなやつが……』

『ここの中心部に組み込まれていてだな』


 やっぱりな。

 ライダーさんなら、そういうと思ったよ。


 SATO:

『ドラハン、人気コンテンツなので……』

『発売中のノベライズ版を読んだら……』

『空中庭園についての説明がありそうですね』


 変態ライダー:

『へぇ〜、ドラハンの小説とかあるんだ』

『人気ゲームはすごいな』


 SATO:

『一定のニーズはあるでしょうから……』

『有名な作家さんが書いていると思います』


 他愛のない話をダラダラと続けていたとき。

 ふいにサトルの椅子と机が揺れはじめた。


 いや、違う!

 家自体、というか地面が揺れている!


 グラグラグラグラッ〜!

 ペットボトルの中身がちゃぷちゃぷと鳴り、木と木のこすれる音がした。

 気分だけは巨大ドラゴンの腹の中だ。


 変態ライダー:

『うわっ⁉︎』


 SATO:

『地震ですね⁉︎』


 たぶん震度2か震度3くらい。

 10秒で収まったから、インターネットの接続が切れたり、なんて被害はなかった。


 携帯のニュースで震源地をチェックしてみる。


 隣の県の沖合だった。

 久しぶりの地震だから驚いた。


 変態ライダー:

『ふぅ、収まった』

『びっくりしたぜ』


 SATO:

『うちの隣の県でした』

『震源地のあたりは震度4らしいです』


 変態ライダー:

『へぇ〜』

『やっぱり怖いよな、地震』


 SATO:

『夜だと特に怖いですね』

『ライダーさんの家は平気でしたか?』


 変態ライダー:

『ちょっと待って』

『確認してくる』


 待つこと1分くらい。

 意外すぎるメッセージが返ってくる。


 変態ライダー:

『あれ?』

『もしかして、俺たち……』

『同じ地方に住んでいる?』

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