第16話

 坑道エリアに入ってから60分後。


 変態ライダー:

『すまん……』

『さっきから俺の腹の虫がうるさい』

『ちょっと飯にするわ』


 SATO:

『りょ〜かい』

『我が家もそろそろ夕食の時間です』


 変態ライダー:

『再開するの、何時にすっかな〜』

『20時くらいでもいい?』


 SATO:

『そうしましょう』

『では、また後ほど』


 変態ライダー:

『((((((((((((((((((((*っ・ω・)っ ブ-ン』


 今夜の加瀬家のメニューはから揚げ。

 お味噌汁、千切りキャベツ、冷やっこが付いている。


 父が早くに帰宅しており、家族でわいわい雑談した。


「どうだ、サトル。塾とかに通わなくても平気なのかい?」


 父の口から塾という単語が出たときはヒヤッとした。

 けれども母がすぐに、


「サトルは自力でも、ちゃんと勉強できるのよね〜」


 とフォローしてくれて一安心。


 なるべく塾には通いたくない。

 ゲームの時間を削られるからだ。


「大丈夫だよ、父さん。もし塾に通いたくなったら、その時は相談するよ」


 サトルはお茶をにごしておいた。


 さてさて。

 ライダーさんとの待ち合わせまで1時間ある。

 忘れないうちに宿題を片付けておくか。


 まずは数学。

 20分で終わらせた。


 次に英語。

 フルパワーで集中したところ、なんとか20時までにやり切った。

 ゲームも勉強もメリハリが一番大切といえよう。


 変態ライダー:

『おっつ〜』

『SATOの家はなに食った?』


 SATO:

『我が家はから揚げでしたね』

『母親の得意メニューなので、月に1回はから揚げです』


 変態ライダー:

奇遇きぐうだな』

『俺はエビフライだわ』

『揚げ物つながりだな』


 SATO:

『エビフライということは……』

『お母さんの手作りですか?』


 変態ライダー:

『そうだよ〜』

『うちの母、エビフライが好きなんだ〜』

『俺も好きだけどな〜』


 なるほど。

 サトルも40代まで独身なら、母のから揚げを、あと300回は食うわけか。


 変態ライダー:

『じゃあ、採掘にいこうぜ!』

『また作戦名つけてくれよ!』


 SATO:

『そうですね』

『じゃあ、ゴッド・ドリル作戦でいきましょう』


 変態ライダー:

『ゴッド・ドリルww』

『なにそれ、最終兵器かよ!』

『格好よすぎてテンション爆上げだわ!』


 SATO:

『どういたしまして』


 変態ライダー:

『ゴッド・ドリル!!!』


 SATO:

『ゴッド・ドリル!!!!!!』


 装備を強化するとき、鉱石系のアイテムは大量に消費される。

 いくら採っても採りすぎるなんてことはない。


『ヒヒイロカネ鉱石を入手しました』


 お、ラッキー。

 一番欲しかったやつだ。


『ヒヒイロカネ鉱石を入手しました』


 マジか⁉︎

 2回連続でヒヒイロカネは熱すぎる!


『タマハガネ鉱石を入手しました』


 さすがに3回連続はこないか。

 タマハガネも当たりの部類だから良しとしよう。


『石ころを入手しました』


 ハズレ。

 一番いらない。


『石ころを入手しました』


 ハズレ2連続か。

 仕方ない、次に期待だな。


『石ころを入手しました』

『ピッケルが壊れました』


 おい!

 完全に悪い流れだな!

 ポイントを移動して採掘をスタートさせる。


『エアメタル鉱石を入手しました』


 よしよし。

 石ころ以外が出たことに安堵あんどする。


 変態ライダー:

『そういやさ……』

『このゲームのラスボスって……』

『もう討伐した人いるの?』


 SATO:

『いや、まだです』

『誰も倒していません』


 変態ライダー:

『⁉︎⁉︎⁉︎』

『それって俺たちが最初の討伐者になれるチャンスがあるってこと⁉︎』


 SATO:

『え〜とですね』

『結論からいうと、チャンスは皆無です』


 ラスボスはシルエットだけ公開されている。

 討伐クエストが開放されるのはこれから。


 SATO:

『上位プレイヤーの皆さんは……』

『現行クエストを全部クリアしており……』

『はっきりいって、新規クエストの実装を待っている状態です』


 変態ライダー:

『あ〜』

『一番槍はそいつらが持っていくわけね』


 SATO:

『はい』

『公式情報じゃないですが……』

『来週にはラスボスたちが来るのでは?』

『という噂ですから』


 変態ライダー:

『楽しみだな〜』

『メチャクチャ強いんだろうな〜』


 SATO:

『ですね』

『四聖竜とか比じゃない凶悪さでしょう』


 ラスボスにたどり着くのは2ヶ月後か、3ヶ月後か。


 とても長い道のり。

 その分、楽しみも大きいといえる。


 変態ライダー:

『やっぱり、アヴァロンから移籍して正解だわ』

『ドラハン、すげぇおもしろい』

『ありがとな、SATO!』

『(σ・∀・)σゲッツ!!』


 SATO:

『なんすか、急に』

『水臭すぎてカビが生えますよ』


 変態ライダー:

『ひでぇww』

『せっかく良い雰囲気にしようと思ったのに』


 SATO:

『いやいや』

『これから戦う五賢竜、かなり強いですから』

『さっそく討伐方法を考えています』


 変態ライダー:

『SATOって、作戦立てるの上手いよな』

『そういう頭の良さ、尊敬するわ』

『(・∀・)イイネ!!』


 SATO:

『そうですか?』

『まあ、頭をつかうゲームは嫌いじゃないですね』


 変態ライダー:

『だから、あっちの作戦も考えてほしい』


 SATO:

『はぁ……』

『あっちとは?』


 変態ライダー:

『おいおい』

『ドラハンに移籍したもう一個の目的』

『忘れちゃったのかよ?』


 SATO:

『???』

『え〜と……』


 あ、思い出した。

 こっちの世界はプレイヤー人口が多い。

 ステキな恋人をゲットしようぜ、みたいな夢物語。


 SATO:

『すみません……』

『完全に忘れていました(汗)』

『ライダーさんの彼女探しですよね』


 変態ライダー:

『なあ、SATO』

『アイディアを出してくれよ』

『俺が恋人をつくるためのミラクルな作戦』


 SATO:

『いや、無理っす』

『正攻法でがんばってください、としかいえません』


 変態ライダー:

『((*´∀`))ケラケラ』

『SATOならそういうと思ったぜ』


 まったく。

 ライダーさんは愉快すぎて、時間があっという間に過ぎちゃうのが難点だな。

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