第14話
まさに
イフリート・ドラゴンを討伐してから1週間。
サトルたちは残りの
まずはガイア・ドラゴン。
続いてシルフ・ドラゴン。
最後にネプチューン・ドラゴン。
慣れない水中バトルのせいで、ネプチューン・ドラゴンには6回負けたけれども、ガイアとシルフの両竜には、2回ずつしか負けなかった。
うんうん。
装備が万全だと戦いやすいな。
あと、ライダーさんの成長も大きい。
ビミョ〜な残りHPなのに、ギリギリまで戦おうとするシーンが、先週までは目立っていた。
本人が自発的に直したところ、うっかり死んじゃう回数が減った。
まあね……。
ボスモンスターと戦っていたら、小型モンスターが乱入してきて事故死、とか理不尽が起こるゲームだから。
安全マージンを意識しておく。
それだけで死亡率がぐっと下がる。
ということを、サトルも自分の失敗から学んだ。
四聖竜クリアでようやく脱初心者。
ここからラスボスまでの道のりは長い。
次に待ち受けるのは
状態異常とかを乱発してくる、トリッキーな難敵だ。
そいつらを倒したら
一撃必殺レベルの技を持っている、ヤバすぎる
5+6で11体。
倒しきるのは2週間後か、4週間後か。
サトルも強くならないと。
次の壁にぶち当たるのは時間の問題といえよう。
そして嬉しい変化がもう一つ。
登校したとき、伏見エリナと自然にあいさつを交わす仲になったのだ。
「おはよう、伏見さん」
「おはよう、加瀬くん」
やった〜!
毎朝、早起きした
「あれ? 伏見さん、メガネを変えたんだ?」
「そうそう。前のやつ、フレームがゆるくなっちゃって」
「つるの部分にちょこんと花柄が入っているの、かわいいね」
「……⁉︎⁉︎」
あ、照れた。
やっぱり愛らしい。
「……変……じゃないかな?」
「そんなことないよ」
「よかった」
パアッと花が咲くような笑みをくれる。
「加瀬くんは機嫌がよさそうだね。ラッキーなことでもあったの?」
「ああ、ちょっとゲームでね。念願だった目標を一つクリアしたから」
「へぇ〜。そういや、初めての自己紹介のとき、趣味はネットゲームっていってたね」
「よく覚えているね。何ヶ月も前なのに」
「まあ……だって……」
すごいよ。
自分の趣味を堂々といえるなんて。
エリナはボソッと口にする。
「そうかな? 伏見さんだって、読書、と宣言していたような……」
「いや……まあ……そうなのだけれども……」
エリナは視線を泳がせて、肯定とも否定ともつかない態度をとる。
「ほら、読書って幅が広いでしょう。学校で本を読んだりするけれども、それは
サトルは思わず笑ってしまった。
こんなに早口でしゃべるエリナ、初めてだったからだ。
「やっぱり、伏見さんって、おもしろいよね」
「そんなことないよ。私がおもしろい人なら、この国は一億総コメディアンだよ」
「そういう表現がユニークなんだよ」
「やだ……恥ずかしい」
ぽっ!
エリナはたくさんの表情を見せてくれる。
こういう小さな発見がサトルにはたまらなく嬉しい。
「ちなみに、加瀬くんはどんなゲームをやっているの?」
意外だった。
エリナがゲームの質問をしてくるなんて。
「絶対に知らないと思うけれども……」
サトルの心は正直だから
「みんなで協力してモンスターを倒すやつで」
「うんうん」
いけない。
エリナはゲームに興味がない。
こんな話を聞いても退屈するはず。
「ドラゴン・ハンターといって、先月にシリーズの新作が出たやつなんだ」
「……ドラゴン……ハンター」
一瞬だけ妙な間があった。
「それって家庭用ゲーム機をネット環境につなぐやつかな?」
「ネットに接続しなくても遊べるけれども、その場合、ソロプレイに限られちゃうかな。おもしろさ90%減だよ」
「あはは……友達がいない人には厳しいゲームなんだね」
「勇気がいるかな。最初の仲間を見つけるのは」
ゲームについて語りたくなる気持ちを、サトルは押し殺そうとした。
エリナはにっこりと笑い、続きを
「どんなところが楽しいの?」
効果テキメンだった。
語りたい欲が止まらなくなる。
「ドラハンは全部が楽しいけれども」
主な理由は3つある。
まず1つ目は……。
「難しいところかな。大人たちが熱中する難しさなんだよ。小学生向けゲームとは毛色が違う。それがクセになるんだ」
「歯ごたえがある、ということかな?」
「そうそう、ギリギリ勝てる。そういう綱渡りには中毒性がある」
そして2つ目は……。
「キャラクターとか、サウンドとか、装備のデザインとか、本当に格好いいんだ。なにもかも格好いい。日本人クリエイターの得意な分野、みたいな」
「世界に誇れる部分、みたいな?」
「そういうこと」
そして3つ目は……。
「誰かと一緒にがんばれる、てところかな。ゲームという閉じられた空間だから、変な上下関係とかないし、フランクに会話できるんだ。そういう時間が好きかな」
「やっぱり、いいな。加瀬くんは人に語れるものがあるから」
「伏見さんの方こそ。とても聞き上手なんだね」
「そんな……」
視界の隅っこに登校してくるエリナの友人が映った。
「じゃあ」
「また」
そこで会話を打ち切るのが2人の暗黙のルールだった。
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