第12話

 よしっ!

 とうとう完成させた!


 アクア・ドラゴンを倒すこと12回。

 必要なアイテムをコンプリートしたサトルたちは、街にある工房で、新しい装備をつくってもらった。


 まず、武器。

 アクアエッジという名の片手剣だ。


 見た目がとてもきれい。

 宝飾品みたいにキラキラと輝いている。

 一振りするたびに、水の斬撃エフェクトが飛び出して、想像していたより格好いい。


 続いて防具。

 アクアシリーズと呼ばれる一式だ。


(防具には、基本、素材となったドラゴンの名前がかんされる)


 うろこみたいなのがヒラヒラしている。

 派手さはないけれども、全身をすっぽりおおっているから、ファンタジー世界の半魚人にでもなった気分だ。


 さらにアクセサリー。

 水竜のお守りを持たせれば理想形のできあがり。


 サトルはスキルの一覧をチェックした。

【火耐性:小】

【火耐性:中】

【水属性攻撃アップ:小】

【水属性攻撃アップ:中】


 うんうん。

 対イフリート・ドラゴン仕様になっている。

 これなら倒せそうな気がしてきた。


 SATO:

『すみません、ライダーさん』

『10回で必要な素材がそろう計算でしたが……』

『けっきょく、12回もかかっちゃいました』


 変態ライダー:

『気にすんなって』

『期待値通りにいかないことの方が多いだろう』

『ちゃんと完成したんだから、SATOには感謝しかないよ』


 SATO:

『ありがとうございます』

『あまった素材はお店で売りましょう』

『俺はそのお金で回復アイテムを買ってきますね』


 変態ライダー:

『りょ〜かい』

『俺はそのあいだ、薬の調合とかしておくわ』


 今すぐイフリート・ドラゴンを倒しにいきたい。

 その気持ちは少しある。

 いや、強くある。


 時刻はそろそろ0時。

 明日が休みじゃない限り、とっくに解散している時間だ。


 どうする?

 ライダーさん、明日も仕事だよな。

 サトルは学生だから、少しくらい眠くても平気だが……。


 明日にしませんか? とサトルから提案してみるか。

 あとはライダーさんに判断してもらおう。


 変態ライダー:

『なあなあ』

『SATOは明日、普通に学校だよな?』


 SATO:

『そうです』

『少しぐらいの寝不足は平気ですが……』


 変態ライダー:

『ダメだよ』

『子どもはちゃんと寝ないと』

『夜更かしっていうのは、悪い習慣なんだぞ〜』

『日本人は寝不足の世界1位なんだぞ〜』


 SATO:

『はぁ……』


 変態ライダー:

『な〜んてな』

『俺はこれからイフリート・ドラゴンに特攻してくる!』


 SATO:

『えっ⁉︎』

『ライダーさん一人で、ですか⁉︎』


 変態ライダー:

『試し斬りっていうのかな』

『せっかく新しい武器が手に入ったんだ』

『気になって、このままじゃ寝られないよ』


 SATO:

『一人じゃ勝てないですよね?』


 変態ライダー:

『負ける前提』

『ゆえに特攻なんだよ』

『派手にぶつかって、派手に散ってくる』


 SATO:

『…………』


 変態ライダー:

『気にすんなって』

『一人でも勝てちゃいました、なんて可能性』

『限りなくゼロだよ』


 う〜ん。

 クエストに失敗したら、受注代をペナルティとして支払うのだが。

 好奇心は猫を殺す、てやつかな。


 どうしよう。

 サトルだって新しい武器をつかってみたい。


 親との約束さえなければ……。

 0時を過ぎたらゲームをやらない、という約束。


 SATO:

『わかりました!』

『俺もついていきます!』


 変態ライダー:

『本当?』

『きてくれんの?』


 SATO:

『はい』

『イフリート・ドラゴンを倒した方が、良い夢を見られそうなので』


 変態ライダー:

『グッジョブだぜ!』


 サトルは両親との約束よりもゲームを優先することにした。


 ごめん、許して。

 次のテスト、がんばるから。


 変態ライダー:

『なあなあ』

『作戦名を付けようぜ』


 SATO:

『なんすか、急に』


 変態ライダー:

『ほらほら』

『オーバーロード作戦とか』

『オデッセイの夜明け作戦とか』

『ガルヴァニック作戦とか』

『歴史上、クールな作戦名はたくさん存在するだろう』


 SATO:

『知りませんよ』

『格好いいのは同意しますが』


 ライダーさんってミリオタなのか?

 まあ、中身おっさんだしな。


 変態ライダー:

『SATOが何か決めてくれ』

『このチームの司令官だからさ』


 SATO:

『そうですね……』

『ローリング・ファイヤー作戦』

『とか、どうでしょうか?』


 変態ライダー:

『おっ、いいね!』

『じゃあ、それに決まりだ!』


 SATO:

『笑っちゃうくらい恥ずかしい名前ですけれども』


 変態ライダー:

『いや、最高にイカしてる!』

『ローリング・ファイヤー!!!』


 SATO:

『ローリング・ファイヤー!!!!!!』


 時刻は23時45分。

 イフリート・ドラゴン討伐クエスト改め。

 ローリング・ファイヤー作戦がスタートした。

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