心情と超常

その日予定していた配信は中止、件のアーカイブも削除し、私は1人で部屋にいる事が怖くなり外出していた。

外出を許されるのは午前の間、私が配信を始めた当初、都内の人は警備の人かスーパーの店員位だったが、午前か午後、予め申請をしていれば誰でも外出を許されるようになった、1人という制限はあるが私みたいな独り身には関係の無い話だ。

(幽霊 お祓い)で検索をかけ携帯とにらめっこすること1時間。


『行こうかな、お寺』


外出時間ギリギリではあるが、ここから車で1時間程の所に有名なお寺があるようだ、だが私は決めかねている、それというのも、恐怖で支配されていた先程とは違い今の私の頭にあるのはこのまま顔を出してしまい、幽霊がいることさえネタにしてこのまま登録者を増やしてしまえないか、という配信者根性がふつふつと沸いてきたからである。

(今日はひとまず盛り塩でもして過ごそうかな)

家での対策を考えながら帰ろうと思った矢先、男性の声に足を止める。


『あなた、もしかして、最近何か良くない事でもありましたか?』

『え?』


ヤバい、もしかして宗教的な勧誘か?

男性に対して昔から偏見の目で見てしまう私の戯れ言は、次の一言で崩れ去る。


『例えば、幽霊とか』


怪しい、という感情は沸かなかった。


『え!?どうして分かったんですか!?』


イチコロである。

私は占いや手相等が大好きで、自分に秘めた心の内を言い当てられたりすると途端に信用してしまう悪癖がある。

過去何度もこれで失敗している。

しかしまぁ幽霊と同居してるというイレギュラーは私を思っていた以上に追い詰めていたらしい。


『そ、そうなんです!私今幽霊と同居みたいな感じに

なってて、それでえっと、あ、貴方もしかしてエクソシスト!?』

『い、いや違うよ?けど少し霊感があってね、もしよかったら今から君の家に行っても良いかい?』

『はい!勿論!』


自分は霊感があると言い突如現れた救世主、名前は名乗らなかったので分からないが、身長は180cmと大きい、しかし表情は柔らかく、髪色も黒と、スラリとした体型に見合ったまさに好青年といった印象のこの救世主を部屋へとお連れし、玄関のドアを開ける寸前でようやく私にも警戒という二文字が頭を過る。

(これってもしかしてヤバい?)

しかし彼はそんな私の動揺を振り払うように。


『これは、いけませんね、相当強い怨念を感じる、けど大丈夫、これなら私でも祓えそうですよ!』

『そ、そうなんですか、良かった〰️』


もう入る事が確定しているかのような口振りの彼に気圧され、私は見知らぬ救世主を部屋の中へと入れてしまった。そのまま問題の寝室へと直行する彼。後を追う私に対し、そこで待てと言うようにジェスチャーをすると男は真剣な面持ちで私の寝室へと入っていった。

(はぁー、マズったかな?知らない男をこんな、一応玄関開けっ放ししていつでも逃げれるように)

等と画策する私を見透かしたように、彼は寝室から出てきてしまった。


(え!?もう!?)


『ふぅ、安心してください、私が寝室の霊を祓っておきましたよ!』

『は、はは、ありがとうごさいます、あの、いくらお支払いすれば』

『えぇ!?いいですよお金なんて、ボランティアみたいなものですし、世界がこんな状態の今、外出時位しか自由な時間が無いですから、よくやっているんですよ』

『へぇ、そうなんですか?ご立派ですねぇ』

『いやいや、あ、そうだ!すいませんレナさん、最後に1つやってほしい事があって、これをしないとまた寝室の霊が出てくる可能性があるので』

『え?封印したんじゃ』

『その封印の力をもっと強める神聖な行いですので、是非』

『そう、なんですか?でしたら』

『良かった!では早速、シャワーに入ってきて体を清めて下さい!』

『は?』







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る