第3話帰宅と妹

「ただいま〜」

「あ、お兄ちゃんお帰り〜」

「……何してんだ、お前?」


 霧原美雨きりはらみうがエプロン姿で手にはおたまを持って兄の帰りを出迎えていた。

 美雨は律斗の一つ下の妹で容姿はお母さん似だ。中学生でありながらも可愛らしいハートのエプロンで髪はリボンで結んである。


「何って見ての通りお料理だけど?」

「お前料理できないだろ」

「まぁ何事も形からって言うじゃん?」

「馬鹿なことはやめろ」


 律斗は自慢げにドヤ顔をしている妹に軽く手刀を叩き込んだ。


「いったぁ〜い!お兄ちゃんはこんなにも可愛らしい妹を傷つけるつもり!?」

「ハイハイ、すぐ夕食作るから大人しくしとけ」

「あれ?今さらっとスルーされた気が…」


 霧原家の食事当番は律斗だ。律斗の両親は父親は律斗が幼い時に他界、母親は仕事が忙しくいつも帰ってくる時間帯が遅いため、いつも律斗が食事を作っている。

 

 律斗は料理をする事自体が好きなので別に作る事を苦だとは思った事は無かった。


 なので律斗は帰宅前に近所にあるスーパーに寄って帰ることが日課となっている。


「ほらもう少しで出来るから食器を準備しろ」

「はーい。お、今日はカレー?」

「ん、たまたま家にカレー粉があったしな。ちゃんと美雨が好きな甘めにしといたから」

「さっすがお兄ちゃん!分かってるなぁ」

「ほら、早く食べたかったらさっさと準備しろ」

「アイアイサー」


 美雨は律斗に可愛らしく敬礼をして食器の準備に取り掛かった。

 

(本当に手のかかる妹だなぁ……)


 やれやれと思いながらも自分の作業へと戻る。まぁ自分もよく朝起こしてもらったり、家事(料理以外)も色々してもらっているので人の事は言えないけど。


「ん〜美味し〜!やっぱりお兄ちゃんが作ったご飯はサイコー!!」


 美雨は美味しそうにカレーを頬張った。カレーは律斗が1番最初に覚えた料理でもあるのでよく作る。

 ここまで自分が作った料理を美味しそうに食べて喜んでくれると作り甲斐があったと言える。


「ん。そりゃ良かった」

「いつも思うけどここまでお料理が上手ならお嫁に行っても困りませんなぁ〜」

「そう思うならお前ももう少しは料理の練習をしろ。あと俺は男だ」

「あ、どうせなら私がお兄ちゃんをお嫁さんにもらってあげようか?お兄ちゃんに任せたらなんでも出来るし」

「絶対やだ」


 「えー」と言いながら不服そうに頬をプクっと膨らませている妹の頭を撫でながら律斗は苦笑した。



おまけ


「ねぇ今度は私が夕飯作っていい?」

「美雨が人前に出されるくらいの料理が作れるようになったらな」

「むぅ、兄さんのいじわる〜。あ、でもお菓子なら作れるよ!」

「なんでお菓子は作れて普通の料理が出来ないんだよ……」

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