第2話帰宅中の出来事

「そういえば向かいのホームに天星さんいたな」


 電車から降りて自宅に帰宅中、隣を自転車を手で押して歩いてる奏がふと思い出したかのように呟いた。


(天星……何処か懐かしい響きな気がするけど気のせいか?)


 ダメだ、どうしても思い出せない。


「……い、おーい?律?」

「え、あ、ごめん考え事してた。何の話だっけ?」

「2組の天星さんの話だよ。マジで可愛いよなぁ」

「天星……?誰だそれ?」

「え……?お前それマジで言ってんの?」


 結局のところ分からないので聞いてみれば奏が驚いた様子で律斗に視線を向ける。


「1年1組の天星渚沙あまほしなぎささん。めちゃくちゃ美人で学校の中でも結構有名じゃん。」

「知らないな」

「嘘だろ!?」


 律斗はあまり学校での流行りや話題には興味を示さないので、たまに奏の話の話題についていけない時がある。


 なので例え学校一番の美少女の事だとしても知らなかったのも無理はない。

 

 律斗の返事を聞いて奏が律斗を不思議そうに見つめ首を傾げる。


「あれ?でも律、さっき駅のホームで天星さんの事見てなかったっけ?」

「ん?あーそういえばうちの制服着た女子と目が合ったような……」

「ほんと律って周りに興味ないんだな」

「別に俺には関係ない事だから知らん」


 まったく、やれやれだなと呆れた様子の奏がため息をする。

 え、俺何か変な事言ったかな?


「しっかし天星さんって相変わらず美人だよなぁ。クラスのやつもみんな親しくしているし、勉強もできるし、まさに才色兼備って感じ。なぁ律はどう思ってるんだ?」

「んー特に無いかな」

「律………お前本当に男か?」

「なんでだよ」

「だってあんなに可愛い子を見て何も思わないなんて……あ、もしかして律お前そっちの趣味が……」


 変な誤解をしてからかってくる奏にはとりあえず軽く手刀でチョップを喰らわした。

 

 周りの事にあまり興味が無く、女子に興味が無いとしても俺には断じてそんな趣味は無い。


 大事なことなのでもう一度言おう。俺にそんな趣味は無い。


 奏は相変わらずケラケラと不機嫌そうな律斗をみて笑っているのだった。

 そんな淡いないやりとりをしてる内にいつの間にか交差点に差し掛かっていた。


「お、もうこんな場所か。じゃあな律、また明日」

「おう、寝坊するなよ」

「大丈夫な気がしなくもなくもない」

「どっちだよ」

「大丈夫、寝坊しても律が起こしに来てくれるから」

「寝坊する事、前提なんだな」


 「じゃあなー」と自転車で帰る自称親友の後ろ姿を手を振って見送った後、自分も自宅へと足を運んだ。

 

 

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