高木瀾(たかぎ らん) (1)

 バスの運転手にはとんだ迷惑だろうが……西鉄久留米駅前よりかなり前のバス停で、ギリギリにボタンを押す。

 バス停の所でバスが止まっても、しばらくは席に座ったままで……バスが動き出す直前にダッシュで外に出る。

 あんまり巧い手じゃないが……あ……。

 1人だけ気付いて、バスから降りたか……。

 それも、私達を尾行していた連中の内、1人だけ雰囲気その他が色々と違う奴。

 雰囲気と言っても……姿勢とか身のこなしとか細かい動作の事だ。

 多分、私達を尾行していた連中の中でも、こいつだけが尾行その他の訓練をちゃんと受けている。

 私は携帯電話ブンコPhoneを取り出して、すぐ隣に居る治水に通信アプリMeaveで連絡。

『二手に別れるぞ』

『わかった』

『じゃあ、一一時半に西鉄久留米駅の駅ビル内の本屋の女性向けファッション誌コーナーの前で』

 そして、とぼとぼ歩きながら交差点に差し掛かると……私と治水は反対方向に曲がる。

『大半は撒いた。西鉄久留米駅行きのバスに乗ったまま。ただ……警官っぽいのに気付かれた』

 続いて「兄貴」と「おっちゃん」に通信アプリMeaveではなく、ゲームに偽装したアプリのチャット機能で連絡を入れる。

『その警官、どうしてる?』

『治水と二手に別れたら……私の方に付いて来た。ストーカーに追われてるフリして、交番に駆け込んでみる』

『二手に別れたのはマズいな』

『どう云う事?』

『2人そろって何かを見落す可能性より、1人が何かを見落す可能性の方がデカい』

『しまった』

『まあいい。とりあえず、一番近い交番への経路を調べて、お前の作戦でいけ』

 私は足を速め……尾行してる刑事らしき男も歩調を合わせ……。

 少し歩いた所に有る交差点で赤信号。

 信号待ち中のフリをしながら、さりげなく、私を追ってる刑事の姿を確認し……。

『問題発生』

 私は「兄貴」とおっちゃんに連絡を入れる。

『どうした?』

『私を尾行してた奴が消えた』

 だが、その時……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る