第2章:悪いやつら

広域組対 捜査官 猿渡喜龍 (1)

『あ、猿渡さん。どうも、休日にすいませんね。安徳セキュリティの久米です』

 待て、馬鹿野郎。

 マル暴の警官の携帯電話ケータイにヤー公からの着信履歴が有ったなんて事になったら、洒落にならんぞ。

 そもそも、フツ〜の会社員にとっての休日でも出勤する事も平日が休みになる事も有る俺が、今日は休みだとどうやって知った?

 電話の相手は安徳セキュリティの副社長の久米銀河。

 なお、安徳セキュリティは警備会社を装っているが……内実は暴力団だ。それも九州最強クラスと言われる「武闘派荒事専門部隊」の。

 俺は、安徳セキュリティと同じ「安徳グループ」のチンピラの犯罪を金と引き換えに見逃してやった結果、気付いた時には、警察の情報をヤツに流す代りに俺は小遣いを受けとるズブズブの関係になっていた。

 ヤツは表面上は、俺に敬語を使ってるが……実状は……俺がヤツの手下だ。と云う笑えない状況だ。

「な……なんだ?」

『あの……欲しい情報が有るんですが……どこの「カイシャ」の人に訊いたらいいか判んなくて……』

「えっと……何の……?」

『ウチの「親会社」から、ある男を見付けてくれって命令が来ましてね。いや、お互い、宮仕えってのも大変ですね』

「ある男? 誰だ?」

『何日か前に長崎刑務所の特異能力者棟から脱走した有馬剛平についての捜査情報ですよ』

「へっ?」

『何か、あの野郎、俺に惚れててストーカーをやってるみたいで……ウチのグループ会社の連中に俺の居場所を訊いて回ってるらしんですよ。困ったもので……。で、今日の夕方5時までに判ってる情報を連絡していただけますか?』

 そう言ってヤツは電話を切り……。

 ん?

 ヤツが電話を切った直後にメールの着信が……。

 ああああッ‼

 ふ……ふざけんなッ‼

 メールは見覚えの無いアドレスから送られて……本文も件名の何も無し……。ただ、別居中の俺のカミさんが子供2人を連れて歩いてる写真だけが添付されてた。

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