眞木桜(まき さくら) (3)

 家にやって来たのは、隊長代行の中島さんと、後輩の大石。

 ある書類を百枚以上とモバイルPCを各1つ。

「で、ある奴に、これを渡さないと、瀾と治水の身が無事で済まんぞ、と言われててな……」

 瀾は、中島さんと大石が持って来た書類を何枚か見て……。

「つまり、桜さんを脅してる奴は……桜さんの勤め先の管理職クラスの名前と役職をリストアップしたい訳ですね」

「お……おい、何で判った?」

「有名な手ですよ。『地方紙を1年分、分析したら、その県の県庁の管理職クラスの大半の名前と役職のリストを作れる』ってヤツでしょ」

「あ……あのさ……お前らも、その手で……その、ウチのカイシャや同業のエラいさんの個人情報を……」

「見習いで破門された私が知ってると思います?」

「で、何すればいいの?」

 そう訊いてきたのは治水だった。

「これの偽物を作ってくれ。管理職クラスの個人名を偽名に変えたヤツをな……。ワープロで何とか……」

「そんな事したら、偽物を渡した相手にバレますよ」

 瀾は冷静にそう指摘。

「や……やっぱり、そうなる……かな?」

「そして、どこを改竄したかがバレたら、こっちが相手の意図をどこまで読んでるかもバレてしまいますよ。後々、確実に面倒な事になる」

「やっぱ……この手は駄目か……」

 そう言ったのは中島さん。

「いつまでに渡す約束なんですか?」

「あたしが研修に行く日の朝」

「方法は……そうだ……。あの、付近のコンビニに行って1本でも多く買って来て欲しいモノが有るんですが……。大丈夫だと思いますが、足が付かないように、支払いはカードや電子マネーじゃなくて現金で」

「何?」

「こすると消えるマーカー」

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