安徳セキュリティ社長・行徳清秀
ややこしい関係ってのは有る。
血縁上は「伯父」。
ヤクザとしては「親」。
表向きは「俺が社長をやってる会社の親会社の会長」。
総合評価は「仲が最悪なのに喧嘩する訳にはいかない親類」。
「これやらかしたの……お前のとこの『副社長』の『お友達』らしいぞ」
俺の
なお、その「女」の大半は、誘拐か……金で「買った」相手。なお、「買った」ってのは単なる買春じゃなくて人身売買の意味だ。
そして、作った子供の大半が異能力持ち。……いや、「作った」ってのは、慣用句でも比喩的な意味でもなくて俺の
そうして生まれた娘の1人を、更に別の異能力持ちと
なお、異能力者の存在が一般に知れ渡った時期より、
そして、同じ会議室に居る「伯父貴」にして「親分」は、その狂った
あ、正妻ってのは「政略結婚した同業者の娘(なお、おそらくは何の異能力も持ってない)」って意味だが、
で、プロジェクターで映し出されてるのは、大怪我をしたウチのグループ会社の「正社員」達の写真。
「で……こいつらは生きてんですか?」
「入院中だが、一応は。だが、退院出来ても、真っ先に市役所の福祉課の障害者向け窓口に今後の相談に行く必要が有るだろうがな」
「意識は?」
「これも、一応は有る」
「で、何て言ってるんですか?」
「だから……ウチの下っ端らしい奴を手当たり次第襲って、お前んとこの副社長の居場所を訊いてるそうだ」
「えっ?」
「この前、長崎刑務所から脱走した奴が犯人らしい。とっとと、あの『犬』にカタを付けさせろ」
「何者なんですか、そいつは?」
「普通の人間です」
そう言ったのは、プロジェクターに繋っているモバイルPCを操作している……一見、かなりお堅い職種の会社員か公務員に見える、痩せぎすの体に、一見ダサいデザインだが、良く見ると最高級の鼈甲で出来た伊達眼鏡をかけた三十代後半の男。
親会社の副社長と言うべきか、上部団体の若頭と言うべきか迷うが……要は「伯父貴」にして「親分」の懐刀の酒村孝太郎だった。
「え……えっと……『普通の人間』?」
「ええ、そっち関係の学者センセイも『異能力者』と見做すべきか『単に異常に強い普通の人間』と見做すべきか迷ってる奴だそうですが……若い頃には……そちらの副社長さんと何度も喧嘩して、その
酒村がそう言うと、二十後半ぐらいのガタイのいい男の写真がプロジェクターに映る。
「二十年前の写真ですが……どうやら、今の外見も、三十前半にしか見えないそうです」
「な……なるほど……」
「あ……若い頃には……そちらの副社長の久米さんと互角だったと言いましたが……」
「何ですか?」
「
えっと……「普通の人間」の定義や範囲って……一体全体、何なんだ?
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