眞木桜(まき さくら) (2)
「ただいま〜」
「あのさ……桜姉さん……これ見覚え有る?」
夜に帰宅して、居間に入った途端……妹の治水から、とんでもないモノを見せられた。
「え……何で……それが……」
大きさは硬貨ぐらい……だが……それは……。
「これ……GPS付きの発信機ですよね?」
もう一人の妹である瀾がそう言った……。
「そ……それ、どこに有った?」
「学校の帰りに、入学式の日に、桜姉さんが着てたスーツをクリーニング屋さんに受取に行ったら、クリーニング屋さんから、スーツのポケットに入ってた、って言われた」
「えっ……」
ただのGPS付き発信機じゃない……ウチや「同業」が使ってるモノだ。
「ちょっと見せて……」
片面に有るシリアル番号を確認し……。
「ごめん……久留米レンジャー隊の眞木だけど……このシリアル番号のGPS付発信機、どこが使ってるモノか判る?」
仕事用の
『ええっと……広域組対の久留米支部ですね。どうしたんですか?』
「いや……その……細かい話は後で報告します、はい。切りますね」
「あの……私と治水の両方が……通学中に変なヤツに尾行されてたんですが……。入学式の翌日から……」
「あ……それ……まさか……」
「身に覚えが有るの?」
「一応、念の為、他に変なモノが無いか、家中、探しましたが……」
「何か有ったのか?」
「何も……」
「ごめん……治水には言ってないけど……桜さんの部屋に不審物が……」
「えっ?」
「瀾ちゃん、何で黙ってたの?」
「その不審物って何だ? ってか、私の部屋に入ったのか?」
「すいません……非常時だったので……」
そう言って、瀾は、あるモノを持ってきた。
「……あの……瀾ちゃん……何……それ?」
「あ……あ……あ……そ……それ……」
「分解してないんで、発信機や盗聴器の有無はちゃんと調べてませんが……少なくとも、電波は発してませんでした」
「い……いや……待て……それ……」
「ええ、桜さんの部屋のクローゼットの中にあった……不審なヌイグルミです」
瀾が手にしているのは……久留米絣の丹前を着た……白いタヌキと黒いウサギのヌイグルミだった。
「おい……瀾、なんだ、その気持ち悪い顔は……? 職場の同僚や学校の同級生が同じアニメが好きだと知ったアニオタか、知り合いが同じアイドルのファンだと知ったドルオタみたいな顔はやめろ‼」
「う〜ん、むしろ……すごく身近な人が自分の同類だと知った十五歳のヌイグルミ・フェチの高校生みたいな表情だと思う」
「治水、それ……まんま……いや、私は……その……」
「あのさ、桜姉さん、瀾ちゃんや満姉さんがヌイグルミ抱いて寝てる事を散々馬鹿にしてたのに、自分もヌイグルミ抱いて寝てたなんて事は……」
「無いっ‼ 無いっ‼ 無いっ‼ 絶対に無いっ‼」
「じゃあ、これ、私が、もらっていいですか?」
「あ……あ……」
すると、瀾は、何故か、ウサ公とタヌくんを置いて居間から出て行き……。
「えっと……そろそろ……話戻そうか……って……瀾ちゃん?」
何故か、瀾は恐竜のヌイグルミを3つ持って来た。
「ほら、ガジくん、スーちゃん、タル坊、美味しそうな
「ら……瀾ちゃん……?」
おい……待て……。
「ほら、ガジくん、キミは肉食恐竜なんだから……好き嫌いせずに、ちゃんとお肉を……」
くそ……何の嫌がらせだ?
「ああ、判った、私の負けだ。頼むから、私のタヌくんとウサ公を変な遊びに使うなっ‼」
「ガジくん、スーちゃん、タル坊、この子達は、友達だから食べちゃ駄目だよ、わかったね? それとガジくん、友達に噛み付いていいのは、ちゃんと相手がガジガジしてもOKって言った時だけだよ。で……話を戻しましょう。この発信機は何です?」
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