広域組対 捜査官 猿渡喜龍 (2)

「おう、どうした?」

 指定された場所に行くと……居たのは久米銀河。……警備会社「安徳セキュリティ」の副社長……は表向きで、実態は広域暴力団の荒事専門の二次団体の若頭№2だ。

 まずは……何も問題は起きてないのに、何故、呼び出した? と云う感じを装う。

 口調も、立ち振舞いも、わざと無神経かつ強気に……。

 手も足もおっぴろげてソファに座る。

「順調みたいですね」

「ああ……予定よりは多少遅れてるが……再来週さらいしゅうには、『レコンキスタ』内の『S』から、第一報が有る筈だ」

 S……つまりスパイの事だ。

 それを聞くと久米は……テーブルの上に分厚い封筒を置いた。

「部下の方が、体の調子が悪いそうですね。マル対を尾行中に、急病になったとか。その、お見舞いです」

 えっ……?

 中身は……電子決済全盛のこの御時世に……百枚以上の紙幣さつ……。

 どう云う事だ? と思った、その時、久米の携帯電話ケータイに着信音。

 電話に出て一言目は、「はい」だったが、どうやら、相手はヤツの部下……少なくとも目下の誰かみたいで……段々、「おい」だの「こら」だのが混じり、しかも、その誰かは不始末をやったらしく……。

「おい、これ以上、ヘマしたら口から生コン注ぎ込んで筑後川に沈めるぞ……判ってるだろうな」

 えっと……。

「いやぁ、お互い使えねぇ部下を持って大変ですねぇ……」

 えっ?「お互い」?

「なんか……サルさんの部下も……高校生尾行してたら、見失っちまったとか……それも2日連続で」

 まて……誰をスパイにするつもりか……何も話してないのに……何故、知ってる?

「ああ、ところで、あくまで念の為の確認ですが……。ええ、サルさんが、そんなヘマするなんて事は無いんで、失礼な質問なのは判ってんですけど……」

 お……おい……何だ?

「……今んとこ必要なのは、事務職とか庶務でもアクセス出来る情報なのに……わざわざ、荒事に慣れてる現場の刑事をSにしようなんて思ってませんよね?」

 し……しまった……。

 こいつらの「組」の「S」は……俺と俺の部下以外にも、ウチの「カイシャ」内に居る……。

 そして……ヤツらにとっては「俺より信用出来る別の『S』」に……俺達を監視させているらしい……。

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