第18話「引けぬプライド」
「ほれ、出来たぞお前ら」
一週間モンスター討伐に明け暮れ、それなりの手応えを感じていた頃。
丁度、親っさんが防具を作り終わり、クランハウスへと届けてくれた。
「軽くて動きやすいっす!」
「ちょっと重いけど、これなら防御を気にしないで突っ込めるわ~♪」
「凄く動きやすいです!」
マッドには、素早さの利点を下げないよう皮の防具セット。
サーシャは、いの一番で敵に駆けていくので、がっちりした鎧を着せた。さながら重戦士だな。
俺とリリエッタは軽めの鎧で軽装戦士風に。
それぞれの戦い方に合わせ新調してもらった。
やっぱり新品の物は良いもんだ。
しかも親っさん特製とあって、全て総合評価はSランク。これが出世払いで良いって言うんだから、親っさん太っ腹すぎ。
「ありがとう親っさん! これで目標のダンジョンクエストに挑めるよ」
「へっ、さっさとクリアしてどんどん稼いでくれ。それでこそ報われるってもんよ」
確かにそうだな。
頑張って稼いで、親っさんの好意に報いないと。
今の俺達ならきっと大丈夫だ。
あ、そう言えば、この一週間でどれぐらいレベルアップしたのか気になるな。
改めて、みんなの評価をしてみるか。
《マッド 24歳 男》
・ジョブ【盗人】Lv5
・HP=100
・SP=40
・攻撃力=30
・防御力=30
・素早さ=120
・器用さ=70
・固有スキル【虚構突き】
・固有バフ【疑惑の目】
《サーシャ 21歳 女》
・ジョブ【鉄砲玉】Lv5
・HP=120
・SP=50
・攻撃力=60
・防御力=50
・素早さ=70
・器用さ=40
・固有スキル【疾風薙ぎ】
・固有バフ【特攻隊長】
《リリエッタ=バルロン 21歳 女》
・ジョブ【影法師】Lv5
・HP=140
・SP=50
・攻撃力=50
・防御力=50
・素早さ=50
・器用さ=50
・固有スキル【躁鬱の極】
・固有バフ【陰影の極】
おおっ!? ジョブが進化しとるやん! 能力の値も上がってるし、スキルやバフも増えてる……。
しかも面白いのは、元々あったスキルがバフに昇華し、SPを使わずに発動出来そうな予感。
新しいスキル【虚構突き】と【疾風薙ぎ】も、戦闘で使えそうなスキルで楽しみだ。
でも、リリエッタは相変わらず良く分からないな……。
固有バフ【躁鬱の極】がスキルに変わり、バフは新しい【陰影の極】とか言うのが追加されている。
これはあれか? 躁鬱というマイナス要素が消え、戦闘時のみあの凶行を再現出来るという事か?
あ、そう言えば、数日前から躁鬱が発動しなくなっておかしいと思ったんだ。
馬鹿だな俺……その時に評価で確認すれば良かった。
まあ、後悔してもしょうがない。
今はみんなにジョブが進化した事を教えてやらないとな。
「あのさ、みんなジョブが進化してるぞ」
みんなの「はぁ?」と言いたげな顔が面白い。
どうにも信用してくれないので、ジョブ神殿に連れて行った。
天職の確認を済ませたみんながジョブ神殿から出てくると、揃いも揃って慌てていたのが印象的だった。
「本当だったっす……」
マッドに、盗人なら【シーフ】みたいなもんだと言ったら飛んで喜んでたな。
「進化してたけど、また良く分かんないジョブだった~」
サーシャのジョブ【鉄砲玉】は、真っ先に飛び込む姿と被る。ヤクザの鉄砲玉みたいな事なんだろう。
それとなく鉄砲玉とかカッコいいと、フォローしておいた。少し苦笑いだったが、それなりに喜んでいたので大丈夫だと思う。
最後はリリエッタ。慌ててジョブ神殿から出てきたと思ったら、俺の胸で静かに泣いていた。
「よしよし……」
優しく頭を撫で落ち着かせる。これまで、突然気分が劇的に変わってしまい大変な思いをしてきたんだろう。
その辛さから解放されると分かったら、泣きたくなるほど嬉しいのも分かる。
さて、思わぬ収穫を得た俺達【ホワイトカンパニー】だが、新しいスキルやバフを再度確めないといけない。
後少しだけ夜のモンスター討伐でもするか。
あ、因みに俺の評価はこの通り。
《エレン 20歳 男》
・ジョブ【平社員】Lv10
・HP=150
・SP=70
・攻撃力=40
・防御力=60
・素早さ=40
・器用さ=140
・固有スキル【同時進行】【評価】【鷹の目】
バフは付いていなかったが、新しいスキルが追加されていた。これも試さないとな。
それにしても能力値の上昇が凄まじい。
本当、こないだまで雑用係だったのが嘘みたいだ。
嬉しい誤算に思わずニヤけてしまう。
まじで、クランを立ち上げて良かった~。
少し浮かれ気味の俺達の足取りは軽かった。
これから更に強くなろうという気概さえ込もっている。
そして数日後。
新しいスキルやバフの効果を確めた俺達は、とうとうダンジョンクエストに挑むべくギルドにやってきていた。
いや~、しかし新しいスキルは凄かった。
あれならダンジョンクエストでも怖いもんなしだ。
「このダンジョンクエストを受けます」
「クラン専用クエストですね。では、気をつけて行ってきて下さい」
受付で受注を済ませ、早速目的のダンジョンへ向かおうとしていると、最悪な人物に遭遇してしまった。
「おう!! エレンじゃねえか! 探してたんだぜ」
このハゲは……【黄金の槍】リーダーのバッカスだ。
いつか会うとは思っていたが、まさかこのタイミングとはな。
「お久しぶりです」
「おう! そう言えばお前、クランを立ち上げたんだって?」
気安く肩を叩くなハゲこの。
「ええ、まだ新設したばかりですが」
「ほーん、こいつらがメンバーか?」
俺の仲間に指をさすな。
毛根まで死滅させるぞこら。
「またパッとしねえメンバーだな」
流石に限界だった。
気づいたらバッカスの胸ぐらを掴んでいた。
「俺の仲間を馬鹿にするな」
「ああっ? なんだこの手は……喧嘩売ってんのか?」
俺の胸ぐらを掴み返すバッカス。
確かにバッカスは強い。
引退したとは言え、元A級冒険者は伊達じゃない筈だ。
《バッカス 41歳 男》
・ジョブ【モンク】Lv61
・HP=380
・SP=100
・攻撃力=320
・防御力=270
・素早さ=250
・器用さ=90
・固有スキル【正拳突き】【回し蹴り】【ためる】【石頭】【背負い投げ】
うわっ……ヤバいのに喧嘩売ってしまいました!
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