第17話「事前訓練」
次の日。夕方にクランハウスを出た俺達は、首都近郊の森へやって来た。
「ガウッッ!!」
「来たか! みんな! 暗闇における戦闘と、連携を確かめるぞ!!」
俺の合図で陣形を組む。
林道に現れたモンスターは、ポイズンウルフ5体。
その毒牙に噛まれると、丸1日動けなくなる。
集団に襲われれば、お陀仏間違いなし。
「突撃だっつうの!!」
前方のサーシャが突撃し、ポイズンウルフの1体を串刺しにした。
残りの4体は、サーシャの迫力に少し怯む。
俺は、すかさずミスリルの盾を構え剣で打ち鳴らす。
カンカンと甲高い音に注意が逸れたポイズンウルフ達。
その隙にマッドが後ろへ回り込み、1体のポイズンウルフを切り刻んだ。
更に俺は盾を打ち鳴らす。苛立った3体のポイズンウルフは、俺に向かって飛び込んできた。
盾を前方に構え体勢を整える。後ろには、戻ったサーシャとリリエッタが体を支えてくれていた。
3体のポイズンウルフが牙を剥き盾に突進。少し後ろに下がったが、支えてくれた二人のお陰で堪えられた。
「ガウガウッッ!!」
盾に牙を立てて噛みつこうとするポイズンウルフ。
俺は盾に空いた縦長の穴から、ポイズンウルフの喉元へと剣を突き刺し1体を葬った。
残り2体は、左右からリリエッタとサーシャがそれぞれクレイモアで首を叩き斬り、ランスで串刺しにして討伐完了だ。
「やったな……」
「良い連携だったと思います」
「うちら完璧だったよね!」
「俺達最強っす!」
連携の感触を得た俺達は、少し安心したように表情を緩めていた。
今回の戦果は、サーシャのスキルがどのようなものか分かった事だ。
サーシャが突撃した瞬間、俺は評価でステータスを確認したのだが、
《サーシャ 21歳 女》
・ジョブ【無鉄砲】Lv19
・HP=90
・SP=25
・攻撃力=60
・防御力=30
・素早さ=80
・器用さ=30
・固有スキル【特攻隊長】
攻撃力と素早さがそれぞれ20ほど上昇していたのだ。
特攻隊長のスキルは、突撃時に攻撃力と素早さを上げる効果があるみたいだな。
さて、次はマッドのスキルの効果を確かめる事と、嘘をついてしまう本質をどう扱うかだ。
俺達は森の林道をしばらく歩き、次の戦闘へ構えていた。
ガサガサッッ。
林道の左側の森から音が聞こえる。
何か隠れているのは確かだ。
「マッド、左に何が隠れているか教えてくれ。因みに嘘をついてな」
「嘘っすか!? わ、わかったっす……あれは一角ウサギですね」
マッドの言葉を聞いた後、茂みに隠れるなにかにジリジリと近付いていく。
すると、茂みから一角ウサギが逃げていく姿が見えた。
成る程……嘘をついてくれと頼めば、本当の答えが返ってくるのか。
それなら、かなり使える人材じゃないか?
スキルのお陰で索敵能力は高いし、本人の戦闘能力もそこそこ高い。
よし、後はリリエッタのスキルだけだな。
まあ、ある程度察しはついているので確かめるだけだ。
「お、次は骸骨兵士か!」
林道に現れた3体の骸骨。
鎧を着て剣を持っているその姿から、戦場で死んだ兵士が化けたのだと噂されるモンスターだ。
そんじゃあ、ここはリリエッタに頑張って貰うか。
「リリエッタ! お前なんかクビだ!」
「ちょ、なに言ってんすか急に!?」
「そうよ! 冗談でもそんな事言ったらっっ」
「私はクビ……や、やっぱり……私なんて居ない方が良かったんだ……」
うっ、予想通り鬱状態に入ってしまった……。
しかし、こうしないとスキルを確かめられないので心苦しいがしょうがない。
「リリエッタ! お前がクビになったのはあの骸骨兵士のせいだ! あの骨が全部悪いんだぞ!」
「あの骸骨が……くそ……くそがああああーっっ!!」
やっぱり突っ込んで行ったか。
いやー、しかし速い。
目にも止まらぬとはこの事だ。
あっという間に3体の骸骨兵士を骨ごと斬り伏せたリリエッタはその場にへたりこむ。
「ごめん……全部嘘。リリエッタを離したりする訳ないだろ」
「本当?」
「ああ、今日も寝かせないからな? あ・い・し・て・る・ぞ」
「わ、私もっ!」
よし、通常状態に戻った。
「なにこれ……もしかして、うちら毎回これ見なきゃいけないの?」
「こっちの精神がゴリゴリ削れるっす……」
べ、別に毎回じゃねえよ。この戦い方はピンチの時と、突然鬱になった時にしか使わないし。
それに、リリエッタのスキルの一端が分かったから良いだろ……。
正直、リリエッタのスキルはヤバい。
鬱状態で敵に突っ込ませる事で、能力が飛躍的に上がるみたいだ。
《リリエッタ=バルロン 21歳 女》
・ジョブ【躁鬱】Lv19
・HP=50
・SP=20
・攻撃力=120
・防御力=120
・素早さ=120
・器用さ=120
・固有バフ【躁鬱の極】
これが鬱状態で敵に突っ込んだ時の能力値。
HPとSPが半分減るが、他の能力が三倍に羽上がる凶悪なスキル。
だが、使いどころは難しそうだな。
HPとSPが半分減るのは危険だ。
まだ少し調べたい所だが、連発するのは危険。
後日、自然に鬱状態になった時にでも確かめよう。
その後、俺達は親っさんの防具作り終わるまでの一週間、ダンジョンでの戦いを想定した夜の戦闘を繰り返した。
お陰で連携が深まり、戦闘力が日に日に上がっていくのを感じていた。
そして、その副産物なのか、仲間のジョブが進化を見せていく――
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