第16話「いただきます」
さて、みんなに披露する料理を作ろうと思う。
メニューは前世の料理で簡単に作れる物。
手伝いはリリエッタにして貰う。
二人で台所に立っている間に、マッドとサーシャには暗闇で起こる危険について、予知トレーニングをして貰っている。
親っさんは、待ちきれず一杯やってるようだ。
ドワーフはお酒が強くて羨ましいよ。
「先ずは何を?」
「トポテの皮を剥いておいてくれ」
リリエッタに軽く指示して、自分はもう一つの料理に取りかかる。
買い物袋から塊の肉を取り出し、まな板の上に豪快に置いた。
この肉は牛に良く似たモンスター"カウギュウ"の肉。
元々野生のカウギュウを家畜化し、食肉用に育てている。
塊の肉を薄く切り、細切れにしていく。
そこから更に細かく叩いて、ミンチ状に。
出来たら木のボールに入れて次の作業だ。
「トポテの皮は剥き終わりましたよ♪」
「お、ありがとう。次は一緒に"タマオン"の皮を剥いて、みじん切りにしていこう」
タマオンは前世で言う"玉ねぎ"みたいな野菜だ。
リリエッタと一緒にタマオンの皮を剥き、涙を流しながらみじん切りにしていく。
何を作ってるか、大体は分かったと思うが、改めて言うと――"ハンバーグ"だ。
ハンバーグが焼けたら"パン"に挟んでハンバーガーにしようと思う。
チーズやトマト。レタスに似た野菜などもこの世界にはあったので、結構再現出来ると思うんだ。
そして、一時間後。
リリエッタの手伝いのお陰で、つつがなく完成させる事が出来た。
「よし、これで完成だ」
「絶対美味しいですよこれ!」
皿に盛り付けみんなの前に出すと、初めての料理に感想はまちまちだ。
「なんっすかこれ!?」
「良く分かんないけど美味しそうっ!」
「胃袋に入れりゃあ何でも同じだ」
言ってろ親っさん。
食えば分かるさこの美味さが!
「では頂きます!」
ぶどう酒も用意して準備万端。
みんなそれぞれ口に入れ始めた。
俺は感想が聞きたいので少し待つ。
最初に反応したのは、"何でも同じ"とか言ってた親っさんだった。
「なんだこりゃ!? 口の中で肉の汁が弾けるぞ! この揚げた芋? も、ホクホクサクサクじゃねえか! 酒にも合う……うめえぞ馬鹿たれがっ!!」
俺が本日披露したのは、ハンバーガーとフライドトポテ。この世界にも酢は有ったので、ケチャップも作れた。
ファーストフードの王様と言えばこのセットだよな?
俺も前世では世話になったと記憶している。
まあ、こんなのばっかり食ってたから早死にしたのかもしれんが……。
兎に角、親っさんから"美味い"の一言が聞けて満足。
何が胃袋に入れたら何でも同じだ。ざまぁみやがれ!
「こんな美味いの初めてっす! 器用貧乏ここに極まれりっす!」
こいつはいつも一言余計だな。
「二人とも痛いっすっっ……」
ナイス! リリエッタとサーシャ。
俺も一発入れとこ。
あ、親っさんも?
ひっぱたきたくなる頭は言い過ぎかと……。
「最高だよエレン! うち、この料理大好き~♪」
「私も病みつきになりそうです♪ ちょっと悔しいですけどねっ!」
女子二人にも大好評。
いやー、作って良かった。
これなら……"アレ"も喜んでくれるな。
みんなが食べ終わる頃、とうとうアレを出す。
そう、最初に作ろうと思っていた"トポテチップス"だ。
「はい、これもどうぞ」
「なんすかこれ?」
「やけに平べったいぞ馬鹿たれ。こんなの美味い訳が……な、なんだこりゃ!? ちょっと待て!」
トポテチップスを食べた直後に、ぶどう酒を流し込む親っさん。
うんうん。ポテチと酒のコンビは最強だよな。
分かるよ親っさん! 手軽な最強おつまみだ!
みんな親っさんに続いてトポテチップスを食べ始めた。
無言でトポチを食べ酒を流し込むを繰り返す仲間達。
結構山盛りに作った筈なのに、ものの数分で無くなってしまった。
「おかわりないの!?」
「早く持ってこい馬鹿たれ!」
はいはい。作ってきますよ。
芋はもう薄く切ってあるから、後は揚げるだけだしね。
その後は台所とリビングを往復しまくった。
確かにクセになるのは分かるが、みんな食い過ぎ飲み過ぎ……。
昨日に引き続きクランハウスは宴会状態。
サーシャの腹踊りは流石に笑った。
日が暮れるとペースは更に上がり、あの親っさんまでもがベロベロになり初めている。
だが、その中でリリエッタと俺は酒をセーブしていた。
理由は……分かるだろ?
お風呂を沸かし、しれっと交代で体を清めた。
そして夜も深け、みんないびきをかいて寝始めたところで、俺達は2階に上がって行く。
その間、特に会話はなかった。
お互い緊張していたんだと思う。
先にベッドに入ったリリエッタは、毛布を顔まで被って隠れてしまった。
「恥ずかしいの?」
おれが意地悪く聞くと、返事はしないものの頷いているのは分かった。そこがまた可愛い。
ベッドへ近づき、同じ毛布にそっと入った。
お互いの体温が分かり緊張感が高まる。
指先で体に触れると、リリエッタの体がビクッ、と脈をうつ。
そこからは丁寧に優しく体を愛撫していく。
お互い少しずつ衣服を脱いでいき、全部脱ぎ終わったところで唇を合わせた。
「ドキドキしてるの分かる?」
「はい……私も心臓の音が聞こえちゃいそうですっ」
細く美しい両手を握り、何度も軽いキスを繰り返す。
「んぅっ……」
準備が整ってきたと認識した俺は、
「頂きます!」
「ぁんっ、エレンッッ――」
しっかりと礼儀を示し、その裸体を貪る。
絡み付く体。滴る汗。
一晩中、俺達は愛を確かめ合っていた――
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