第14話「告白」

 横には頬を紅く染め、シーツを体に巻いた天使。


「本当に申し訳なかったっっ!!」


 とりあえずベッドから降りて土下座。

 ヤったかどうかは、この際関係ない。

 問題は"覚えていない"と言う事だ……。


「本当に覚えてなんいんですか?」

「はい……すんませんでしたっっ!!」


「謝らないで下さい。誘ったのは、私だし……」

「え……どういう事?」


 昨晩、酔い潰れた俺を2階に寝かせる時だった。

 みんなも酔ってそこら辺で寝てたそうだ。


 とりあえず俺から運ぶ事にしたリリエッタは、ベッドに俺を寝かせて下に降りようとした。


 そこできてしまったのだ。

 躁鬱の"躁"が――


 元々俺の事が気になってたリリエッタは、無防備に寝る俺にムラムラしてしまい襲ってしまったんだと。


 俺も酔ってたのか溜まってたのか、酔いながらも起きた俺はそのまま突入してしまった。


 というのが、リリエッタから聞かされた話だ。

 しかもよくよく聞くと、リリエッタは初めてだった。


「いや、まじで悪かった……」

「だから謝らないで下さいよ! なんか悪い事だったみたいじゃないですか……」


 ああ、確かに。別に悪い事ではないよな?


 いやでも、クランの仲間に手を出すのは、リーダーとしてあるまじき行為だ。


「ケジメつけるよ」

「ケジメ?」


「ああ。俺と……俺と付き合ってくれ!」


 やってしまった事は戻せない。

 ならせめて、しっかりと責任を取るべきだ。


「私、男の人とお付き合いなどした事ありませんし、ジョブのせいでご迷惑おかけすると思います。こんな私でも良いのですか?」

「勿論だよ! 今思うと、俺もリリエッタが気になってた。ただ、クランの仲間だからダメだと言い聞かせてたんだ。でも、好きならそんな事関係ない! サーシャとマッドには、俺からきちんと説明するから!」


 リリエッタは、静かに泣いて頷いていた。

 きっと、ジョブのせいで辛い目に合ってきたんだろう。


 彼女を優しく抱きしめて、頭を撫でた。

 それに答えるように、彼女の手が俺の背中に回る。


「答えは?」

「イエスに決まってるじゃないですかっ」


 今度は見つめ合い、長いキスをした。

 これから二人の旅路が始まるという意味を込めて。


「あの……今日はお休みしても良いですか? 初めてだから少し痛くて……」

「ああ、全然良いよ! ゆっくり休んでて!」


 俺は彼女を2階に残し、一階に居るであろう仲間の元に向かった。


「おお、起きたか馬鹿たれ」

「おはようっす!」

「おは~! ねえねえ、リリエッタ知らない? 朝起きたら居ないんだよね~」


 みんな既に起きていて、お茶を飲んでいた。

 俺はそこで頭を下げ、大事な事を説明する。


「みんなゴメン! 俺、リリエッタと付き合う事になった! 仲間に手を出すリーダーなんて最低かもしんないけど、絶対クランには迷惑かけない。だから許してくれ!」


 頭を下げたままそう説明するが、中々みんなの返事が返ってこない。


 少しいたたまれなくなって来た頃、口火を切ったのは、親っさんの豪快な笑い声だった。


「ガハハハッ! 律儀なリーダーだな全く。付き合う付き合わねえは当人達の自由だろ? それに、お前とあの子なら問題なんて起こさねえって分かってるよ」

「そうっす! お互い好きならクランとか関係ないっす! てか、いつ付き合うのかは、時間の問題だと思ってたっす!」

「ホントだよね~。二人とも好き好きオーラ出し過ぎだもん。リリエッタを頼むよ! あの子、色々あって幸せをあんまり感じてなかったから。まあ、エレンが悪くて別れたら殺すけどね?」

「みんな……ありがとう!!」


 暖かい仲間達から祝福され、俺とリリエッタの交際は認められた。


 その後、起きて来たリリエッタと俺が揃ったら、散々茶化されたけどね。まあ、幸せだから良いか。


「で、ダンジョンにはいつ潜るっすか?」

「そうだな……親っさん。防具も新調したいんだけど、みんなの分を頼んだら何日ぐらいかかる?」

「まあ、1週間ってところじゃねえか」


「分かった。じゃあ、1週間後にダンジョンクエストに挑戦しよう」

「いよいよか~。腕がなるね!」


「それまでに、アイテムの準備と俺達のレベルアップを兼ねて、難易度が低いモンスター討伐クエストを何件かこなそう。連携も確認したいし、新しい戦い方を試したいから」

「分かりました! 足を引っ張らないように頑張ります!」

「ぐふふ、リリエッタの足の方が痛いみたいだから、クエストは明日からだね~」


 昨晩の事を勘づいたサーシャが、ゲスい笑い方をして茶化してくる。


 さすが親友だ。

 リリエッタの些細な変化に、すぐ気づいたのか。


「もう、やめて下さいよサーシャ!」

「ごめんごめんっ! でも、明日からなのは間違いないっしょ。エレン」

「あ、ああ。本格的な活動は明日からにしよう。そうだ! 今日みんな空いてるか?」


 俺の質問にみんな頷いている。

 よし、なら試したい事があるから付き合って貰おう。


「じゃあ、今日は新しい料理を作ろうと思う! みんな味見役で宜しくな!」

「料理っすか?」

「食べたい食べたい!」

「変なもん食わせんなよ馬鹿たれ」

「私より美味しい物は作らないで下さいよ?」


 そう――この世界にはまだ、前世で食べていたような料理がない。似たようなのはあるが、まだまだ未発展だ。


 例の【錬金術師】が転生者なら、有ってもよさそうなんだがな。やっぱり転生者じゃないのか?


 まあ、食に拘りがない人もいるから、なんとも言えないけどね。


 うーん、先ずは何を作ろうかな。

 簡単で美味しい料理……あ、そうだ!


 この世界にはジャガイモ似た"トポテ"という芋がある。

 この世界では煮たり焼いたりして食べている。

 俺も小さい頃良く食べていたっけ。


「という訳で、最初の料理は"トポテチップス"だ!!」

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