第8話「報酬の行方」

 あまりの報酬額に同様した俺は、一旦スライムキングの核を取り下げ仲間達と相談する事にした。


「これが金貨200枚っすか」

「で、どうすんの?」

「私達はエレンさんの方針に従いますよ!」


 ギルド二階のいつもの部屋を借りて緊急会議だ。

 机の真ん中には虹色の核。

 それを取り囲むように、俺達は座って核を眺めている。


「皆で分ければ1人金貨50枚なんだが……俺は、この核を手元に置きたいと思ってる」


 理由は3つある。


 1つは、この核の有用性。


 ギルドから聞いた話だと、キングスライムの核は100年経っても燃え尽きないらしい。


 取って置けば必ず何かに使える筈だ。

 夜営の時の火とか。

 ダンジョンに潜る時の松明代わりとか。


 今はそのぐらいしか思い浮かばないが、絶対に有って良かったと思う日が来る。


 2つ目は、希少価値は変動するという事。


 希少だと言われるこの虹色の核が、世界にどのぐらい存在しているのかを把握しないといけない。


 それによって価値は変わってくる。


 もし売るなら、この時期が一番価値が高いと分かってから売りたい。


 そして最後に、ここで安易に換金して皆にお金を渡したら、クランを辞めてしまうのではないかと不安なのだ。


 お金の切れ目は縁の切れ目なんていうし……。


 仲間を信用してない訳じゃ……いや、良い子ぶるのは止めよう。


 まだ会って数日。

 完全に信用出来た訳じゃないのが、本当の所だ。


 とりあえず皆には、2つ目の理由まで話をした。

 そしたらさ、皆、俺の事を真っ直ぐ見るんだよね。


「リーダーの気持ちは分かってるっす!」

「エレンが自力で獲得した物だしね。好きにしなよ」

「そうですよ! 私達に気を遣わなくて大丈夫ですから!」


 そう言いながら。なんか俺、全部見透かされてるようで、いたたまれなかった。


 だから決めたんだ。

 これは、皆が困った時に使う切り札にしようって。


 金貨50枚の借金なんてさ、皆がいればすぐに返せる。

 仲間さえいればね。


「ありがとう皆……よし! 俺さ、もっとこのクランを盛り上げて、世界一のクランにするよ!」

「そうなれば最高っす! そしたら世界一のクランにいた最初のメンバーだって自慢出来るっす!」

「だね~! うちらが最強だって孫の代まで自慢する~」

「ふふ、私達も精一杯頑張りますよ!」


 やっぱりコイツら最高や!

 なんでこんな良い人材をクビにするかな?

 絶対に俺は見捨てたりしない!


 俺は本当に単純な奴だった。

 この仲間達の良い所しか見えてなかったんだ。


 この後受けるクエストで、その盲目さが露呈する事になる。


 それは、護衛のクエストを受けた時だ。


 商人を20km離れた村まで護衛するクエストを受けた俺達は、林道を順調に進んでいた。


 村まで後半分。

 そんな時に事件は起こった。


「そう言えば、最近この辺りで盗賊の被害が出たって報告があったらしくて、ギルドから注意するよう言われてる。少人数らしいが、警戒は怠らないようにしよう」


 そんな風に注意喚起した後、少し先の曲がり角が気になった俺は、マッドに偵察をお願いした。


「マッド。曲がり角が死角になってるから、その先が安全か確かめて来てくれないか?」

「分かったっす!」


 俺のお願いに快く了解し、偵察に行くマッド。曲がり角から姿が消えて数分後、さっそく戻ってきた。


「リーダー、あの先には"何も"なかったっす。武器に手をかける心配は"ない"っす!」

「そうか。ありがとうマッド」


 俺は忘れていたんだ。

 マッドが、【嘘つき】だと言う事を……。


「ぐへへっ、良いカモがやってきたぜ」

「お、女もいるぜ! こりゃ楽しみだっ」


 それが分かったのは、5人組の身なりの悪い男達が待ち構えている場面だった。


「マッド! 何もないって言ったじゃないか!」

「しょ、しょうがないじゃないっすか! 俺は【嘘つき】なんすよ!」


 ぎゃ、逆ギレかよ……。


「とりゃーっっ!」

「あ、サーシャ待て! 無鉄砲に飛び出すな!」


 あ、サーシャは【無鉄砲】だったんだ……。


「ぐへぇっっ」

「良くも仲間を! 絶対に殺してやる!!」


 相手が油断していたから1人倒せたが、それはそれで怒り心頭にさせてしまって不味い……。


「リリエッタも、サーシャとは長い付き合いなんだから、飛び出すタイミングぐらい分かるだろ! ちゃんと止めてくれ!」

「ご、ごめんなさい……私本当バカですよね……こんなバカは消えた方が良い……」


 あー、ヤバいっっ!! 考え無しに叱ったら、【躁鬱】の鬱の方になってしまった!


「だ、大丈夫なんだよね君達……」

「な、なんとかします!」


 すいません商人さん……俺達、変わり者なんです!

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