2話 喫茶店の店員

体中がふわりと浮きそうなコーヒーの香り。

 

今にも肩を揺らしそうになる軽快なジャズ。


ゆったりと時間が流れゆくこの時間が大好きだ。


「すみませーーーん。空いてますか?』


「はっ。しまった。」


ゆったりとした時間、終了のお知らせである。


「いらっしゃいませ!ごゆっくりどうぞ!」


「あなた。可愛らしい声してるわね。」


「あはは、ありがとうございます!。はは、、。」


あの方がこられて3日目。


3度目はないだろうと思っていたが今日も褒められた。


それほどあの方にはドツボな声なのだろうか


悪い気はしないが、デジャブだと勘違いしてしまう。


そういえば、前も某コンビニでバイトしていた時には店長に言われたものだ。


「あの、アイスコーヒーもらえるかしら?」


「はっ。しまった。」


「あなたはいつも行動がワンテンポ遅い!」


と、またマスターに叱られてしまう。


「っ、はい!!かしこまりました!」


いつもより声のトーンを高くして応える。


私はこの場所が好きだ。


初めて楽しいと思える仕事をしている。


あの頃の私もきっと喜んでくれるはずだろう。


店内の雰囲気、よくわからないコーヒーの味、それにたくさん盛られた生クリーム、何に使うかわからない器具たち、ステンレスのミルク入れ、たくさんのティーカップ、窓の上に並べられたランプ、深い茶色の家具、たくさんの好きが詰まっている。


あの頃大好きだったあの場所に私は今いるんだ。


カウンター側の人間として。


「ペンとノートとコーヒーを愛してね。」


そう、未来の私から言われている気がする


21歳の朝。




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