10年後のわたしはきっと。

@karen_n

1話 母

「お母さん!今日お弁当!!」


「は!!しまった。」


私はいつもこうだ。


息子の蒼太の方がしっかりしている。


「夫に似たのか。」


いや、そんなことを考えている暇はない。


出発まであと13分。


ちなみに自分の支度は終えていない。


そういえば昨日はカレーだったな、、よし、決まり。


「ごめん蒼太、おまたせっ!」


「んもう、遅刻しちゃうよおお」


「って。またお母さん靴下かたかたあああ!!」


「は!!しまった。」


ほんとにできた息子だ。


「夫に似たのだ。」


 今日から新学期が始まる。


さわやかな風が吹き荒れ、花びらが飛び交う桜の木下で


早歩きで歩く蒼太の、小さな、どこかたくましい背中を見ながら


「カレーでごめんね。」


と嘆き、


笑顔で送り出す母でありたい。


そう思い伏ける


夢みがちな21歳の夜。







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