第23話 歓迎されてない…?
「クロサキさん……そうなのですか……」
眉が下がり、目を伏せていた。
見るからに悲しそうな雰囲気を纏わせていた。
あれから一週間経っただろうか。熱が一向に下がる様子が無く、声にならない声で魘されている状態が続いていた。
あれよこれよと続けて無理させようとしたせいなのだろう。相手のことを考えようとしなかった。
とも思ったが、クロサキ自身も制止を振り切って、やろうとしていた。
後がああなると自分自身が一番に分かっているはずなのに。
意外と頑固なのかもしれない。
「……だから、その……クロサキが心配でなかなかこっちに来れなかった。悪かった」
「いえっ!クロサキさんがそうなら、少しでもいてあげた方がいいですよ!苦しくて辛いのでしょう?そういう時は誰かそばにいてあげた方がいいと思うのです。私のことは気にしないでください」
今までひとりだったのですから、と穏やかな笑みを向ける。
正直言って、気が滅入っていた。
だから、シロアンのこの顔を見て癒やされる為に来たというのが本音であった。
純粋にクロサキのことを心配しているシロアンには口が裂けても言えないが。
(オレも変わってしまったな。会う前はそこまでは思わなかったのに)
こっそりと笑んだ顔をしていた。
「クロサキさんとそろそろお話をしたいと思ってましたが、当分無理そうですね……やっぱり、ここは私が!死神の世界に行った方が!」
「いやっだから、それは止めてくれっ!」
行く気満々なシロアンに対して全力で止めに入っていく。
「そうですよね…」としょんぼりとしてしまい、これはこれでどうするべきかと思ったのも束の間、「あ、そういえば、こないだから考えていたいいことが思いついたのですよ!」と急に意気揚々とした声を上げていた。
突然の変わりようについていけず、「あ?…ああ…あ……?」と生半可な返事になってしまっていた。
「思いついたいいことはコレです!」
そう言って、掲げて見せたのは。
そこら中に咲いている白い花が輪っか状になっている、花冠であった。
─が、ヒュウガは初めて見る物だった。
「それは、何だ?」
「これは花冠と言います。本来は一緒にいたい人にあげる物なのですが、前にクロサキにはここに来た歓迎の意味であげました!」
忘れたみたいで置いたままになってしまいましたけどね、と苦笑気味で言っていた。
そこでヒュウガは疑問に思った。
クロサキは二回しか訪れていないというのに、毎日のように来ているヒュウガよりも先に花冠を貰っている?歓迎されている?じゃあ、ヒュウガは今の今までシロアンには歓迎されていないということになる………。
そう考えてしまって、一人落ち込んでしまった。
シロアンは、嫌な顔をせず、笑顔で迎えてくれるから、てっきり。
早とちりをしてしまっていたらしい。
「ヒュウガさーん?ヒュウガさん?」
間近で呼ばれて、現実に戻された。
驚いた顔をしたまま声がした方へ振り向くと、同じように驚いた顔をしているシロアンと目が合った。
キラリと光る蒼い瞳が間近に迫り、その瞳の中に入ってしまいそうな感覚になりそうな時。
「大丈夫ですか?」と首を傾げられた。
「あ、いや、大丈夫だ。で、オレに何か用か?」
何とか誤魔化して話を促した。
シロアンはさほど気にもしてないのか、話題を切り替えた。
「この花冠をクロサキさんに渡して欲しいのです。私はあなたをいつまでも歓迎してますと、お伝え下さい」
「あぁ。分かったわ」
複雑な気持ちを抱えたまま、それを受け取った。
(オレはどんな気持ちでこれをクロサキにあげたらいいんだ)
そんなことを心の中でぼやいていると、
「ヒュウガさんにも、コレあげます」
「………へっ?」
差し出されたのは、今貰ったのと同じ花冠。
訳が分からず、花冠とシロアンを何度か交互に見ていると、
「今、渡すことになってしまって本当にごめんなさい。初めて来た時から歓迎をしてましたのに……。ごめんなさい」
申し訳ないという気持ちが全面に出ていると分かるくらいの落ち込みようだった。
これで許さないのはさすがに。
「全然、いいさ。全く気にしちゃいねー。この花冠ありがたく貰うわ」
笑みを見せつつその花冠を受け取ると、シロアンもつられて笑った。
まるで蕾から徐々に開く花のように。
「ありがとうございます、ヒュウガさんっ!」
好意的な顔をされそのような言葉を言われて、気持ち良くないと思う相手がいるだろうか。
ヒュウガは頬が少し赤らんでいるのも気にせず、「お、おうよ!」と返事をした。
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