第14話 友人への怒り

 シロアンに会うと妙な気持ちになる。それは、悪い意味ではないので別にいいのだが、それが何なのか分からなくて気持ちが悪い。

(ともかく今はクロサキのことだな)

 足早と自分の家へと急ぐ。

 そんな時、遠くから自分の名を呼んでいる声が聞こえる。

 その声の方向へ顔を向けてみると、いつもの友人の姿が見えた。

「早く帰んなきゃいけねーのに、何の用だよ」

 独り言を吐きながらこちらに向かってくる友達を待っていた。

 少々息が切れている友人が、「よぉ、ヒュウガ」と声を掛けてきた。

「なんか、急いでいるような時に声を掛けてごめんな?」

「本当にそうだよ。で、何の用なんだよ」

「いやぁ、さっき声を掛けた時、オマエが走っていたから何をしてんかなーと思ってな」

「ああ、それはな……」

 はたと口を噤むことになってしまった。

 友人には知られてはならないことがあるからだ。

 それと同時に過去に一度悪いことを言って、ヒュウガがかなり怒った出来事も思い出してしまった。

 これから言おうとしていたことを気づきもしないのだろう、急に黙ってしまったヒュウガに、「オイ?どうかした?」と言ってきた。

 その声にハッとしたヒュウガは、「いや、どうもしない」と言いつつも。

「とにかく急いでいるんだ。またな」

 と、その場から立ち去ろうとしていたヒュウガにその友人が独り言のような声量で言ってきた。

「もしかして、アイツがまだいるのか」

 すぐさま友人の方を振り向くと、ヒュウガが見ていたことに気づいたのか、顔を見た途端に「いや、なんでもねーよ」と慌てた様子で首を振っていた。

 その急な態度から、無意識のうちに怒っている顔をしていたんだなと自覚した。

 特に何も言わずヒュウガは今度こそ立ち去った。

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