第6話 ENDmarker.

「へへ」


 唇を離して、彼女が、ちょっとだけ、ほほえむ。その表情が、あまりに切なくて。


「おまえは、それでいいのか」


「いいよ。わたし。たのしかった。学校に来れた。ときどき授業を受けて。保健室で眠ったり、屋上でキャッチボールしたり。たのしかった。ありがと」


 彼女。最期の。


「あなたが好きなのは、わたしの、最期だから。わたしのことは。気にしないでね。もっと、いいひと、を。見つけ、て」


 ほどけた言葉が、途切れ途切れになって。

 保健室のベッドに、彼女が倒れ込む。ぽすっという音。

 目覚めることのない、眠り。

 自分の仕事が終わったのだと、思った。すぐに同僚に連絡して、街の外縁に向かわないと。

 彼女の最期。あともう少しだけ。ほんの少しだけ。心に焼き付けて、携帯端末を手に取る。

 もう、彼女はいない。

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