魔王、冒険者になる。





「アラン!今日で勇者学院も卒業だね」


「ククク、これから冒険か」


「まずは、冒険者登録をするとして・・・。その後はどうしようか?」


「決まっておろう。世界征服だ。ククク、大陸全土が我にひれ伏す時がーー」


「もうアランったら、世界征服とか魔王みたいな事いっちゃって〜」


クスクス笑うエレンを見て、我は本気なのだがと思うが、勇者との協定がある事を思い出す。


仕方ない。魔王が約束したのだ。

守らねば我のプライドが許さんな。


我らは冒険者登録をする為に王都にある冒険者ギルドを訪れる。


「いらっしゃいませ。新規のご登録ですか?」


「はい!登録に来ました!私と彼の二人お願いします」


エレンが手続きを我の分までしてくれるようだ。

夜の事もあるが、エレンはかなりの献身的な女だ。

今では我のお気に入り。あれと一緒だ。ペットを可愛がるようなそんな気分だ。


「天職を教えて頂いてもよろしいですか?」


「二人とも勇者です」


「勇者様ですか!?あ、失礼しました」


勇者という事に驚き声が大きくなったが、すぐに謝ってきた。


「今代の勇者様達だったんですね。メンバーは二人でよろしいですか?それとも募集を掛けたりもできますが?」


「アランどうする?」


「我らだけでいいだろう。別にメンバーを増やすメリットもないからな」


「では、二人という事ですね。まぁ後でメンバーも増やせるので大丈夫ですよ。冒険者についての説明をしてもよろしいですか?」


受付の確認にエレンが代表し了承する。


「冒険者ギルドは各国の主要都市に支部があり、冒険者のクエスト受注から、金銭管理等の銀行的役割もあります。次に冒険者ランクはS,A,B,C,D,Eの六ランクに別れています。ランクが上がる程クエスト難度も上がりますが、その分報酬もよく高ランカーにはギルド側から色んな特典もあるので頑張って下さい。そしてクエストですが、常設クエスト、通常クエスト、緊急クエスト、指名クエストの四種類があります。何か質問はありますか?」


「私は大丈夫です。アランは?」


「我も特にない。まぁ肩慣らしに一番高いクエストを頼む」


「あの、すいません。冒険者ランクによって受けられるクエストは決まっておりまして・・・。その例え勇者様だとしても冒険者に登録されると皆さんと同じEランクから始まります」


「そうか、ならーー」


「これだから、勇者はよ〜」


誰だ。我の言葉を遮った愚か者は。

貴様か、おいそこのむさ苦しい男よ。


「ド、ドンベェさん!」


「貴様、我に何か言いたい事があるのか?」


「あぁん?自分は勇者だからすげぇとか自惚れてるんじゃないだろうな?」


「別に自惚れてはないが、我がすごいのは事実であるが?」


「へっ、この初心者勇者様は大層すごいみたいだせ」


周りに聞こえるように大きな声で問いかける。


「試してみるか?」


「ちょ、ちょっとアラン・・・!?」


我は魔法を展開しようとする。


「そこまでだ」


我らの仲裁に誰かが入る。

この者、只者ではないな。何者だ?

今戦えばーーー


「エドワードさん!!!」


「君は、新人冒険者で勇者なのかい?・・・ふむふむ、確かに実力は相当のようだ。だが、ただ強さだけが冒険者に必要な訳では無い。それを冒険者として身につけて高みへのぼってくるといい」


「ほう。我に実力以外で足りてないと?」


「俺にはそう見えるが」


「ククク、面白い。我に足りない物があるなど言われたのは初めてだ。 冒険者の高みとやらが、どれほどか下から這い上がって確かめてやろうではないか」


「お、いいね。そうしてくれ」


「貴様の名を聞いておこう」


「S級冒険者、エドワードだ」


「その名、しかと覚えておこう」


クハハハハ。

この男、前に魔王城までたどり着いた勇者より強いではないか。

勇者が人族の中で1番強いと思っていたが、そうではないのだな。


今のこの身体で殺り合えば

いい勝負・・・いや、それともーーー


ククク、楽しみが尽きん。




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