勇者、魔王と入れ替わる。





「エレン!」


「魔王様どうされました!?」


「え…?」


あれ?ここは…。え、エレン!!!

僕は周りを見渡す。

エレン、エレン、エレン、エレン!


「魔王様、周りをキョロキョロされてどうされたんです?」


ここはどこなの!?!?

屋敷?いや何か王国の陛下と謁見した時の部屋にそっくりだけど…。


それより目の前の女性、サキュバス…

え、魔族!?なんでこんな所に!?


「もう魔王様ったら、放置プレイですの?」


この人は何を言ってるんだ?

魔王様って…そういうプレイなんですか?


「ちょ、ちょっと。あの、そのえっと…どちら様ですかね?」


「もぅ魔王様ったら、ナヨナヨ男子系『僕はだれ?貴方は?』放置プレイですのね!?」


なにそのプレイ!?

そんなプレイがこの世にはあるんだろうか…


「本当にそういうのじゃなくて!ここはどこになるんですか?」


「魔王様はその設定を貫き通すつもりですね!」


はぁ…何かもういい。

この人テンション高いなー…。


「ここは魔国の魔王城で、貴方様はこの魔国を治める魔王様で在らせられます」


うん、これは夢だ。夢に決まってる。

この浅黒い身体の色も、頭から生えてそうなこの2本の角も、そして羽織ってるマントみたいなのも全部夢だ。


だって僕は勇者アランなんだから。

それがいきなり魔王になっちゃうなんて。

入れ替わりとかそんな事はないない!

ないったらないんだから!


バチンッ!


「いったぃ!?」


「魔王様何をされてるんですか?」


普通に痛いんですけど。

やっぱり夢じゃないってこと!?


「魔王様、もうこんな時間ですし床に参りましょう」


うん。もう寝よう。

さっきまで寝てたみたいだけど寝よう。

起きたら現実に戻ってるかもだし。


「ささ、魔王様」


僕はサキュバスさんに案内されるがまま部屋にはいる。


よし、寝よう。

明日には元通りになってるだろう。


「あのー…どうしてベッドの上でお尻を突き出してるんですか?」


「魔王様、さぁこの醜い哀れな豚にどうかご慈悲を」


ふぇ!?なにこれ!?

そういうプレイなの!?


「ご、ごめんなさい。それはちょっと…その、ダメです!ぼ、僕には好きな人がいるので」


「魔王さま…は!?そういう事ですね。前に仰られてたアレですね!『ククク、たまにはナヨっとした男が逆に犯されるっていうシチュも興味深いの』って」


ま、魔王さん!?

そういう性癖がおありなんですか!?


「ちょっとまっ…」


「ククク、いいではないか。ほれ、身体は素直ではないか」


「そのサキュバスさん…あっ、いや、そのうわぁぁぁぁ!!!」



僕はもうお嫁いやお婿にいけない…



拝啓、エレンさん

いかがお過ごしでしょうか

魔王城には、見た目おっかない魔族さんばかりなのでここ数日自室に引きこもっています。

そして、サキュバスさんに『魔王様はこれにハマられたのですね!』と不敵な笑みを浮かべ毎晩僕は犯されています。

僕は、君に永遠の愛を誓ったはずなのに…

自分が不甲斐ないです。

もし、これが悪夢で目が覚めてもう一度君に会えた──



「ふ、ふげぇ!?」


「何をだらしない声を出ておる」


ここはどこなのだろう?


「え、なんで僕がいるの!?」


目の前には僕(魔王)がいた。


どうやら、これは悪夢ではなく本当に入れ替わっちゃったみたいだ。


それに入れ替わりがバレたら殺される!?

エレンが魔王に寝盗られた!?!?


僕の頭はおかしくなりそうである。


お互い演じ合うって決めたけど、僕に魔王さんなんてできるだろうか…


魔王さんにエレンを寝盗られた事は僕が生きて来た中で一番のショックだった。けど。


「僕の身体だけどエレンが魔王さんとね…」


なんだろう、この気持ちは。

別に寝盗られ願望なんて僕にはないったらない!


とりあえず、魔王さん演じてみる。




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