僕は勇者、アラン。






僕の名前はアラン。

家族や幼馴染のエレンと辺境の村で慎ましく暮らしていた。16歳になると協会で天職の信託を受ける。それも今から受けるのだ──


実家は農業を営んでおり僕も家業を継ぐつもりでいるし役に立つ天職につけたらいいなと思っている。


「アラン楽しみだね!私はお母さんと同じ裁縫師の天職だったらいいな〜。そして2人でずっと仲良く一緒に暮らしてたいな」

「そうだね!僕も大好きなエレンと一緒にいたいよ!」

僕とエレンは自分で言うのもあれだけど好き同士なのだ。いつものように『一緒にいようね』とか『好きだよ』なんてよく言い合ってる。でも『結婚しよう』とはお互い言えてなくて進展はまだしてはいない…

でも手は毎日繋いではいるからここから進展させていかなきゃね!


信託の義が進んでいく───


「次の2人組は前へ」


協会の人に声を掛けられ僕はエレンと2人で前へ出ていきお互いの目の前にある水晶に手をかざす。


かざすと同時に水晶が2つとも眩い光を放つ


「こ、これは────」


「勇者の卵!!!───しかも2人とも」


僕達が引き当てたのは勇者の卵

勇者になれる可能性を秘めた者に授けられる天職なのだ。


「私達勇者になるの?」

「で、でも僕に魔王なんて倒せないよ…」

「大丈夫!アランは私が守るんだから!」

「ぼ、僕だってエレンもま、守るんだ!」

「もうアランたら〜ありがとう」


エレンは目をトロンとさせて上目遣いで僕の手を握りながら見つめてくる。

あまりの可愛さに頭がクラクラしてエレンの事以外考えられなくなっていた。


勇者の卵を授かった者は勇者学院に通い勇者になる事を求められる。

勇者になり世界を周りを人々を守りそして魔国の魔王を討伐するのが使命なのだ。


僕達の所に国の騎士の人達が迎えにきて王都にある勇者学院に入学する。


1年間でみっちり自分を鍛え勇者として羽ばたいていくのだが今年の勇者の卵を授かった人は僕達を合わせて10人と例年より多くこれから共に学ぶ学友がいる事に嬉しさとワクワクを覚えた。何故なら村には子供は少なく友達もエレンしかいなかったからだ───




僕は勇者学院に入りもうすぐ1年が経とうとし卒業が間近に近づいているにも関わらず虫も殺せないヘタレな最弱の勇者のレッテルを貼られていた。



「おいおいヘボ勇者そんなんで大丈夫なのかよ!」


───「うぅッ」


突然足を掛けられた僕は顔から地面に倒れ込み派手に打った僕は鼻血を流す。


そんな僕を同じ勇者学院に通っていたライルが不敵な笑みを浮かべ見下ろしていた。


「おい、エレンこんな間抜け辞めてこの俺と付き合えよ。俺はこの国の公爵家の嫡男にして将来魔王を倒す勇者になる男だぞ。そんな俺の女になれるんだぞ」


「いやよ!私はアランと一緒なんだから!貴方と付き合うなんて真っ平ごめんだわ!」


ライルは勇者学院に入ってからというものエレンの容姿を褒め俺の女になれとしつこくいいまとっているのだ。


「お前も分からない女だな!」

「やめて!」


無理やり腕を掴み迫るライルに抵抗を試みるエレン。

僕はそんな姿を見て怒りを覚える。


「エレンから離れろ!」


僕は立ち上がりライルにタックルを試みるが軽く避けられ僕はまた地面に顔から突っ込んで倒れてしまう。


「ほんとお前邪魔だな!」


────ドンッ


「うぐッ」


倒れた僕の腹をライルは蹴り飛ばす


「あーぁ、殺すか?練習中に少しやり過ぎたとか言えばそれで大丈夫だろ」


──ドンッ───ドンッ─


「うぐッおぇッ」


倒れた僕は何回もライルに蹴られその度に激痛が走り声が漏れる。


「ライル辞めて!お願いアランが死んじゃう…!ライルの言う通りにするから」


涙を流し必死に懇願するエレンの姿が霞んだ僕の視界には映っていた。


ダメだエレン。ライルの言う事を聞くなんて──

僕はなんて情けないんだろエレンを泣かせてしまうなんて。

身体に力を入れるが入らない僕は縋る。


誰か──誰でもいい───

エレンを助けて。


僕はそこで意識が途絶えた─────



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