ありきたりな悲劇は(13)
当日は、
雨季が過ぎ、夏を感じさせる
晴れておだやかな日だった。
時刻まで、近くの市民公園駐車場でも、和良は迷いをふりきれずにいた。
計画では緩やかな下りのカーブを駆け抜けるように加速し、ハンドル操作を誤まったかのように、歩道ようなの小道につっこみ、たまたま歩いていた正美さんをわたしが。
正美さんの決意は固い。
おおくのつらいおもいとともに、ほんとうに、ほんとうに、それでも、生きようとしていた。
不運だとひとはいうのだろうか。
不憫だとひとはおもうのだろうか。
どこかに、かのじょがあるけるせかいはなかったのだろうか。
あるいていけるみちはなかったのだろうか。
わたしは、かのじょによりそえていたのだろうか。
時刻が近づき、エンジンをかけた。
わたしがするしかない。わたしが、彼女を 「ッ」
どうにもならない感情におもわずハンドルを両手でたたいた。
「んでだっ」
「なんでだっッ」
「なんでなんだっッッ」
「これから、 これから・・・なんじゃ、なかったのかっ」
「どうしてッ、こんなっ」 ・・・。
和良は一つの決意を胸に車を走らせ始めた。
計画通り、緩やかな下りのカーブに差し掛かり、彼女が歩く姿をみつけた。
そうだったんだ、むりにぶつかる必要なんてなかったんだ。
彼女のそばを、危険な猛スピードで横切った愚かな車が単独の事故を起こす。
代わりにわたしだけが逝けば、少なくても彼女には時間が残る。
世間も、こんな住宅街での暴走車の事故が起きればいやでも注目を集めるはずだ。
「すまない、わたしにはできないよ」
彼女のそばを通り過ぎようとさらにアクセルを踏み込んだ。
「そんな気がしてた」
体をすっと道路に投げだす彼女を懸命に避けよとブレーキをかけハンドルを操作した。
「!!!!??」
形容しがたい激しい衝突音とともに車は制御を失い、そのまま工場の壁に衝突した。
あまりの衝撃に一瞬で意識がとび、なにかが焦げた匂い、燃えるような音に気が付き、うつらうつらと意識を取り戻した。
「まず、い。は、やく」
這うように抜け出し、痛めたからだを何とか起こし、
見渡した世界は、かのじょのいないせかいだった。
りかいを遮るように、いしきが飛び、その場にたおれた。
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