挿入話昔馴染み(2)

お葬式。

正美の泣いて腫れた目元。うつむく姿になんて声を掛けることが正しかったのかいまでも、わからない。

それからのことを正美から聞いたのは1年が過ぎ、秋にさしかかるころだった。

正美のことが心配で仕方がなかったけど、わたしにできることはなにもなかった。

住んでいたマンションも引き払ったらしく、どこにいったのかも、わからなかったからだ。

どうすることもできなった虚しさを抱えながらも、

卒業。大学に進学した。

あたらしく始まった大学生活になれはじめた頃に、

あれからの、

正美のことが知ることができた。

きっかけは。

バイト先だった喫茶店に昌司さんがお客として訪れたことだった。

昌司さんとは、高校のときに正美と再会を果たしてから、何度が顔を合わせていたからすぐにわかった。向こうも気づいたらしく、勤務時間のあとに話したいことがある。と、待ち合わせをした。

バイト先をあがり、待ち合わせ場所へ。

そこには、昌司さんと 少しうつむく正美 がいた。

「まさみっ!!」  「!」

「みっちゃんっ!!」

2人で抱き合い、

「ごめんね、ごめんね。」とあやまる正美。

「いいの、いいの」

「ずっと、ずっと連絡しようとおもって・・・」

「いいって、こうしてまた会えたから」

ふたりで、泣いて、ひどい顔ってふたりで笑った。

昌司さんは「しばらくは二人でゆっくり話したらいいよ」といって歩いて行った。

2人でベンチに並んで座り、

これまでのことを聴いた。

あのあと、正美を引き取ったのは、正美の伯母にあたる方で、

正美曰く「肝っ玉母ちゃん」みたいな性格らしい。

「わたしは、独り身だし、一人ぐらい増えたって変わりはしないよ」

とすぐに引き取ることを決めたそう。

落ち込んでふさぎ込むような生活をしていた正美のお尻を(物理的にも)叩き、叱咤してくれたらしい。

なかなかに豪快な性格らしく、昌司さんの話を聴いたら、即本人に突撃。

「彼女がくるしんでるときに、あんたはなにしてるんだい!」

「何もしなくったっていいんだよっ」

「そばにいて、はなしをきいてやりな」

と昌司さんも尻を(物理的に)叩かれたんだ、とあとから昌司さんが話してくれた。

ちょっと、会ってみたくなった。

そのあとは、献身的にささえようとしてくれる昌司さんと伯母さんの力強さに押されるように、なんとか、大学受験に合格して、今に至るらしい。

何も言えずに、離れた私にどんな顔で会えばいいのかわからずに、ずっと過ごしていたこと。そんな折に、昌司さんが会わせたいひとがいる。と呼び出され、わたしと再会したことをはなしてくれた。

わたしも、正美になにを話し掛けていいかあの日わからなかったことを話した。

「ごめんね、ありがとう」

ふたりで言い合って、また一緒に遊んだりしようと笑いあった。

それからは、

少し遠い昔みたいな関係になって、大学生活を送っていった。

わたしと正美は大学を卒業後就職。昌司さんは大学院へと進学した。

就職してからも、3人で飲み会や食事会なんかをしてすごした。

月日は経ち、

わたしは就職先の営業マンの男性と結婚。押しの強さに押し切られた形かな?

その後、

大学院生活を終えて、就職した昌司さんと正美が結婚した。

2年後に、二人の第一子となる男の子。唯君が誕生した。

わが子じゃないのに、わが子のように猫かわいがりしてしまったのは、ちょっとはずかしい思い出だ。ふたりは、いえ、3人になった家族は本当に幸せそうで、うらやましくもあった。



その頃、私たち夫婦の仲は修復できないくらいな溝ができ、話し合いの末に離婚をした。お互いがお互いを想い合って一緒になったけど、ふとした価値観の違いをお互いが見ないふりをしてきたことが、ある日の決定的な溝をつくる喧嘩に発展してしまった。

それでも、彼も私も、お互いに、「これまでありがとう」といって別れられたのはよかったとおもう。

ただ、幸せそうな正美の顔を思い出し、

どうしても伝えることができずに過ごすうちに,

疎遠になってしまったことを今も後悔している。

あの事故が起きなければ、

どんなによかったことか。




正美のなにもうつさなくなった顔をみて、おもわずにはいられなかった。


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