挿入話 昔馴染み
正美と友達になったのはいつだっただろうか。
当時はどちらかといえば、内向きな性格だったから、友達と呼べるほどに仲のいい子はいなかった。
男子には少しからかわれる程度だったとおもう。
良くもなく、悪くもなく、過ごした小学校。
4年生にあがってすこしたったある日。
他の子よりもやんちゃで活発な男の子は、手持無沙汰だったのか、たまたま席の近かった私に、ちょっかいをかけはじめてきた。
きっと悪意があったわけではなかったのだろう、反応しないわたしの気をむかせようと、
「おい こっちみろよっ!!」 と肩をつかんできたのだ。
思いのほか大きかった声と行動に、驚いて固まるわたしと
その声に静まり返った教室の空気のなか、
「びっくりするじゃない、しずかにできないの?それにいやがってるじゃない」
と少し離れた席に座っていた正美が声をかけてきたときだろうか。
そのあと、やんちゃな子と正美を含めた女子との小競り合いになった。
いつのまにか、蚊帳の外になってしまったわたしをよそに、がやがやとしだす教室。
そんなさわがしさも先生の登場により、終わりをつげた。
授業もおわり、合間の休み時間に、意を決して 「さっきはありがとう」というわたしに、
「いいの、うるさかったのが気に入らなかっただけだから」と正美。
「それより、だいじょうぶだった?」 「うん、平気」
「そう。よかった」と笑う正美。
その後も、特別なことがあったわけじゃなかったけど、声をかけられて、いつのまにか一緒に行動するようになっていた。
仲良くなった、のかな?
一緒になんかよくわからない話で二人で笑って、たまにやんちゃな子と口喧嘩しだすから、おろおろと仲裁みたいなことをしたりして、月日は過ぎていった。
なんだかさわがしかった思い出を残し、小学校を卒業、中学生になった。
セーラー服がちょっとかわいくて、あこがれてたから、袖を通した時はうれしかったな。
内向きだった性格だったけど、この機に違うことをしてみようと、部活動は運動系に入ることに決めた。正美と一緒にいたかったのもあったとおもう。ふたりでなににしようか?って相談し合うのも楽しかった。
部活見学を経て。正美とバスケ部に入部することにした。
いろいろみてまわっていたときに、女子バスケ部のキャプテンをしている先輩のプレーする姿がかっこよかったから、「わたしもああいう風にプレーしてみたい」っていったのがきっかけだったかな。
あこがれて入ったのはよかったけど、すごく、たいへんだった。というのも、練習がきつく、顧問の先生は鬼のような顔で怒鳴る。まぁ怖い。少し、半泣きで先輩に「すごく顔がこわいです」と愚痴をいうと、
「あぁ わかる。わたしもそうだったよ」と先輩がた。
「一年生はまだ先生の授業をうける機会がないとおもうけど、普段はむしろ、おもしろい話をしながら、わかりやすい授業をしてくれるんだよ」 「えっ?」という私たちに、
「部活動のときはもう、熱心すぎるくらいになるんだけど、落差が酷いの。わたしも1年生の時に先輩に聞いて、にわかには信じられなかったもの」
正美と二人で「信じられない・・・。」 と頷きあったのは良い思い出だ。
そんなことはあったけど、先輩たちはやさしく、いろいろなことを教えてくれた。
合宿中とかは、年頃のせいか、恋の話が一番多かったな。
その頃から、少しずつ、内向きだった性格が変わっていったような気がする。
瞬く間に時間はすぎていった。
それなりに、
恋に浮かれて、
嫉妬して、
告白しようか悩んで、
相談して、
フラたけど、なにか、吹っ切れたりして。
ちなみに、顧問の先生の授業はたしかに、面白くて、わかりやすいものだった。顔が怖いけど。
いつも正美といたんな。親友っていうのかな、きっとそうだとおもう。
楽しかった中学時代もいよいよ終わりを迎え、卒業式。
ずっと、一緒にいた正美とは家庭の事情ですこしだけ遠くにいくことになって、それぞれ別の高校に通うことになった。
卒業することに、すこし涙して、ふたりで写真を撮った。
「またね」
笑顔で別れた。
はなればなれになったけど、たまに連絡して、休みを合わせて遊んだりもした。
でも、それぞれに、新しい友達ができて、1年が過ぎ2年の中頃と、段々と会う機会は減っていった。
そんな折だった、近くのデパートに買い物に行ったとき、正美とばったり再会したのは。
「私の、彼氏」
「えーっ!」
恥ずかしそうな正美をよそに、
「彼氏になれた、山本昌司です」という男。
思わず、「なれたってなによ?」というわたしに
「入学したときからの、一目ぼれで、ずっと好きで、この前、告白したばかりです」と返す彼。
余計なことをいうなと、あわあわと少し赤くなる正美がなんかかわいい。
「ふーーん」とにやにやしだすわたしに、
「も、もう、行くね、また連絡するから」 「うん、馴れ初めを聴かせてねー」と手を振る私。「もう。じゃあね」
彼氏かーぁ、いいなーぁ、やさしそうだし、ちょっとお茶目な感じもあるし、なんか似合ってる。「ふふっ」なんかうれしくなった自分に、やっぱり正美はわたしの大切な友達なんだなって、おもった。
後日、正美と久しぶりに遊んで、「なんか中学生にもどった気分だね」って2人で笑いあった。
本当にうれしそうだった顔がいまも記憶に残っている。
高校3年生のとき、
テレビに流れる事故のニュース。午前9時過ぎ、高速道路の渋滞の列に大型のトラックが突っ込む大惨事だった。
ヘリから映る光景は、トラックが渋滞の列を押しのけ、乗用車を押しつぶすように乗り上げて止まる様子。
昼をこえ、夕方にさしかかるころ、
事故の死亡者の名前が流れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます