第4話ありきたりな悲劇は(4)

男は、「このままではいけない」と、一目みたとき直感した。


寄り添うように歩く女性に話しかけると、


「少し前に、夫と息子さんを」「目の前で」「どうじに」


ぽつぽつと語られる内容に、「無理もない」と思わずにはいれなかった。


寄り添う女性が語るには、


事故後も、時折取り乱してはいたが気丈にふるまい、これからはじまる裁判の行方を見守ろうとしていた。


「夫と息子の分まで」 「わたしが」 「しっかり見ていなくちゃ」と呟くように囁くような姿があまりに痛々しかった。と。


女性も何かにつけて、なにかあったら手伝うからね。と声をかけたが、頑なに、「わたしは大丈夫。心配してくれてありがとう」と。


ようやく、事故の裁判が終わったのですが、とてもではないが、望むような判決ではなく、あたかも、偶然におきた不運な事故です。と、そんな判決だったのです。


傍聴席で、すすり泣く彼女は、

裁判が終わってから、少しずつ生気が抜けるというのか、表情がなくなり、抜け殻のように。


ただ、もともとしっかりした性格だったのが幸いしたのか、なんと生活はできてはいるけれど、この先もこのままではいけない、と。方々を探して、今日ここに連れてきました。と。


寄り添われた彼女の目は、なんといえばいいのか、どこもみていないような。そんな目をしていた。


「ここには同じような経験をなさったかたがおられます。お話してすこしでもなにかが軽くなればとおもいます。どうぞ、ゆっくりとして回ってみてください」


なにかできることはないかと、そう思ったが、今の彼女に届くとはどうしても思えなかった。


そんな、彼女は連れられながらも定期的に行われるこの集まりに、少しずつ顔をのぞかせるようになり、すこしずつではあるが、なじんできたようだった。


直接的には関わることはあまりなかったが、少なくとも、あの少女とは打ち解けたようだ。

少女もまた、両親をなくし、親戚の家を渡り歩かざる負えずに、心を閉ざしていた子だ。

わたしと少女には少しの関りがあり彼女のことを尋ねてみると、

「あなたくらいの妹がいたの。もう死んじゃったんだけどね」と悲しそうに教えてくれた。と。


その言葉に彼女の境遇はもっと重いものなのだと気づかざるおえなかった。深まっていく少女と彼女の関係のなかで、わたしも改めて紹介され、いつしか3人で会うようになっていった。


月日は少し流れ、


少女にとっては彼女は「姉のような母のような」


彼女にとっては少女は「妹のような」


私にとって彼女たちは「家族のような」


そんな関係になっていった。


少女の成長する姿と、亡くした妹の成長していく姿とを、重ね合わせていたのかもしれない。次第に笑みが浮かべるようになった彼女に「もう大丈夫だ」とそう思っていた。


次に会う約束を3人でして別れてから、少し経ったある日。


彼女から電話だ。「これから会って話したいことがある」と。


どこか切羽詰まったような、声に違和感を覚えたが、承諾して、わたしは待ち合わせ場所にむかったのだった。

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