#79 夢の中に行ってる場合じゃねぇって
それは、
そんな時間に、突如強い力を発したパワーストーン。
つまり、この時間に気をつけろということ……?
「あっ」
「どうした京汰」
「華音も、カレンも、聖那さんも……夕方から夜に部屋を荒らされてた……」
「そうなのか?!」
つまり、魔物が活発な時間帯にポルターガイスト事件は起きている。魔物が動き出しそうな時間帯に、あのパワーストーンが自ら忠告していたというわけか。
俺が考察を2人に語ると、悠馬は『京汰もたまには使える頭してるんだよね』と言ってくる。ここはスルーだ。
「でもさ、狙いは何なんだ? 京汰の周りの女の子ばっかり狙って、京汰を引き付けてるってことか?」
『女の子をダシに使うのは良くないですよねぇ、ご主人』
「でもみんなに聞いても、盗まれてる物はなかったって言ってたんだよなぁ。ただただ、荒らされてただけだって」
『……今思ったんだけど、ってことは、犯人は
「探し物……」
「魔物が必死に探すものって何だ? 京汰分かる?」
「分からん」
女子の部屋を狙うということは、女子が持ってるような物?
でも華音もカレンも聖那も、俺から見たら女子力は平均以上にある方だと思ってる。そんな彼女達の部屋に入ってもなお、見つけ出せない物って一体何なんだよ本当に……。
「何なんだよ一体……」
『何だろう……』
「……♪探し物は何ですか、見つけにくい物ですか」
『♪カバンの中も、机の中も』
「『♪探したけれど見つからないのに』」
突如父と悠馬のデュエットが始まり、2人が俺を無言で見つめる。
「……え?」
『京汰ぁー。ノリ悪すぎ』
「まだまだ探す気ですか、って言ってくれよ京汰ぁ」
「……その歌知らないから! 多分俺が生まれる前だよね?!」
「生まれる前でも、この歌は常識だ」
「ってか歌ってる場合じゃないから」
……いや、確かに。
犯人は「カバンの中も机の中も」探したのだろう。そうじゃなければ、彼女達の部屋はあそこまで荒れないはずだ。でも見つからない。相当「見つけにくい物」なのかも知れない。
歌も終わった後、悠馬が呟いた。
『ねぇ、華音ちゃんとカレンと聖那さんの共通点って何だろう』
「俺の知り合いってことじゃない?」
『他には?』
「明るい?」
『他には?』
「……び、美人?」
『やだ、何照れてんのよ京汰くん』
「うるせぇ」
「いいなぁ京汰。色んな美人と知り合いなのかぁ」
ニヤニヤする父を睨みつけると、俺のスマホが長く震え出した。
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