#29 “よじかんめ”旅行だぞ
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巧が夏休みにやりたかったことその1、のタコパは超楽しく終了。
家も綺麗に使ってくれるし、買い出したくさん行ってくれるし。ホストの俺、つまり京汰くんも非常に楽でした。
巧のやりたいことリストその2の「海に行く」、とその3の「花火大会に行く」、は所属してる文化祭実行委員会で達成できたらしい。すっげえ満喫してるやん。こういう時、サークルっていいなぁとかちょっぴり思うよね。
ただ、まだまだ巧はリストをコンプリートできていないらしく……。
「その23、“よじかんめ”メンツで旅行に行く、と、その17、花火をやる、と、その30、バカ騒ぎする、と、その5、BBQをする、がまだできてないんだよね」
「巧……多すぎっしょ」
「玲香。大学生はな、楽しんだもん勝ちだぞ」
「それは知ってる」
いや待て。どんだけリストアップしてんだよ。
ホントそういうとこ、最年長のくせしてガキなんだよね。そこが好きなんだけどな。てかその30が「バカ騒ぎする」って、曖昧じゃねえかよ。
まぁそれら全てひとまとめに叶えちゃうなんて、いいかもしれない。
大貴も同じことを考えていたみたいだ。大貴と巧はいつもアイデアマンで、俺達を突飛な方向に引っ張ってくれる。
「よし巧、そんなら全部まとめて叶えちゃおうぜ」
「まとめて?」
「おうよ。……みんなで花火&バカ騒ぎ&BBQ旅行やろうぜ!」
「大貴お前天才っ!」
ってなわけで例のグループLINEで話を進めて、場所もホテルも決まって。大きなスイートルーム1つを借りて、寝る時は男女別部屋に別れる感じ。玲香と会長のとこは「異性と一緒に泊まるなんて100年早い」と親に言われたようだが、何とか説き伏せたみたいだ。玲香の親も、結構厳しいんだなぁ。
まぁ、いろんな家庭があるよね。結果一緒に来てくれて良かったっす。
運転免許を持ってるのは巧と大貴と華音とカレン。華音いつの間に持ってたのね。俺は
<いや京汰は妖だって操作なんかでき……>
黙ろうね悠馬くん。
<で、でも僕は本当のことを……>
旅行についてきたいなら黙ってなさい。……よしよしいい子だ。
こうして、2泊3日の“よじかんめ”旅行がやってきた。
実はこの旅行中に巧が誕生日を迎えるので、俺達は巧を省いたグループを作ってサプライズ計画を立てている。最年長は特にちゃんとお祝いしなくちゃね。浪人で大変だった時の苦労も忘れるような、良い思い出にしなくちゃ。
そう思って俺達は、各々の荷物を持って集合場所に向かっていたのだが……。
……は? 巧鞄デカくない? 家出すんの?
「やりたいことを全て詰め込んだらこうなったの!」って、またしてもガキ要素を発揮。
大きめのレンタカーのトランクに何とか詰め込んで(ほぼ巧の荷物が占領していた)、巧運転の車と華音運転の車に分かれる。
じゃんけんで俺は華音ちゃんの車に。ラッキー! てか、じゃんけんなしに華音の車にスルッと乗り込める式神が羨ましいわ……。何せイケメンですから、もしここに乗っている玲香が悠馬の姿を視たなら、多少は黄色い歓声をあげるだろうね。俺と大貴なんて蚊帳の外になりそうだ。
あ、一応フォロー入れとくけど、大貴だってかっこいいんだぞ。腹筋硬いし。イケボだし。
華音は超安全運転。生命の全てを預けられる安心感。もしあなたが事故って俺が死んでも、あなたのことは1ミリも恨みません。天からでも君に想いを寄せ続けます。でも、きっと死なないだろう悠馬のことは恨みます。華音ちゃん奪うんじゃねえぞ。
パーキングエリアで一旦挟んだ休憩の時に、華音はやっと悠馬が無断乗車してることを知ったらしい。めっちゃ集中して運転してくれてたのね。さらに好感度アップ。一方で、断りもなく俺と大貴の間に来たりトランクに埋もれたりしてた式神は好感度ダウン。大貴は寝てる時間が多く、タコパの時ほど敏感ではないようだ。
休憩から小一時間程度で、目的地に到着。
BBQでたらふく肉を食らい、カレンが野菜めっちゃ焦がしまくることに笑い、アウトレットパークで買い物を楽しみ。
その後は巧が大量に持ってきた花火を全て消化し、会長がネズミ花火にビビりまくってることに爆笑して、ホテルに戻って他愛もない話をして、夜が更けていく。あっという間に、巧の誕生日まで、あと30分。
……いや待って寝るなよ?! 運転疲れたからって主役寝るなよ?!
あわあわする俺らを見て、「むしろ寝かせちゃって、0時になった瞬間叩き起こせば良くない?」と冷静に言うのは玲香。あなたらしい意見だね。そうしましょう。
ついにやってきた、午前0時。
玲香が巧の枕を引っこ抜いて、耳元にスマホを当てる。
「ん……なに……おわっ!!」
スマホからはバースデーソング。
そして巧がいない隙にホテルの人にお願いしておいたケーキが部屋にやってきた。
「巧! お誕生日おめでとーう!!!」
「えっ?! うわぁぁぁありがとう! 超嬉しい!」
すっかり眠気が覚めたらしい巧は、なぜかケーキではなく冷蔵庫へ。なぜ。
すると彼は大量の飲み物を抱えて戻ってきた。マジか。だからあなたの荷物家出レベルだったの。
「俺は晴れて合法だ。お前たちは違法だけど俺が年上として見過ごしてやろうじゃないか」
チューハイの缶をプシュッと開ける。巧が持ってきた飲み物は全て見事にアルコール。確信犯だなこいつ。サプライズはさすがに知らなかったようだが、誕生日を迎えたら堂々と飲むつもりだったようだ。
俺らもちょっとドキドキしながら、それぞれが飲みたい缶を選ぶ。
「かんぱ〜い!」
まぁ、今日は無礼講ね。
サプライズも大成功。
すげぇアオハルって感じ。
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