#23 女神と結婚したい【曽根玲香】
・・・・・・・・・
「ん……」
「あ、起きた?」
「え……?」
え、なんで同い年くらいの女の子の声がするのよ。私弟しかいないんだけどな。お母さんこんな可愛い声出せないし。出したら引くし。
えっ、もしかして、弟の彼女?……いや、“嫁”に囲まれたあいつが3次元の女の子を家に上げたら、その日から地球の自転の向きが変わっちゃうよ。
目をしっかりと開けて周りをよく見ると、体にはいつものお布団ではなく、水色のタオルケットがかかっていた。あれ……ちょっと、というかすごく頭が痛いです。ぐわぁんぐわぁんってしてる。てか、昨日私ワンピース着たまま寝たの……? どうして……?
そこまで考えた所で、昨夜の映像がぼやぼやぁ〜っと脳裏に映し出された。
学校帰りに突然、「俺らのサークルのコンパあるんだけど来ない?」って半ば強引に居酒屋に連れて行かれたんだ。最初は嫌だと思ってたんだけど、「やっぱ1年生だよね! うわぁ可愛い〜」などと言われるうちに何だか気分良くなっちゃって、「ジュースのおかわり持ってきたよ!」って差し出された液体を飲んだ後から急にフワフワして、体が熱くなって、自分で立てなくなってて……。
え? で、その後どうなったの? ここどこ? てか今日授業じゃんうわぁ!
「ちょっと玲香! そんな急に起き上がったら、体びっくりするよ!」
まずはこれ飲んで、とコップに入った水を渡してくれたのは、華音だった。
「華音?! なんで私ここに……?」
「おはよう、玲香」
「お、おはよう……私、どうして……」
「やだもう、ほんとに覚えてないの?……昨日、男の先輩に絡まれて潰れてる玲香をたまたま会長が見かけて、助けてくれたんだよ。それで、あの時間だと玲香の家まで帰れないからって言って、私の家までおんぶして運んで来てくれたの」
あぁ…………そうだそうだ。
なんか最後の方、駅前の広場で、両隣を男の先輩に挟まれてた気がする。確か、「俺の家来ようよ」とか何とか言われて……。
でもそれを、あの会長が助けてくれたってこと? しかもおんぶって、どういう状況? 私そんなに酔ってた?
「え、待って、会長が? 会長が私を助けておんぶした?!」
「うん。結構ガラ悪そうな先輩だったらしいけど、会長が声をかけたら、玲香が会長のこと見て『会長』って呼んだみたい。その瞬間、先輩達は『会長』の意味をなんか勝手に誤解して退散してくれたみたいよ。……あとこれね、まだ開けてないお茶のペットボトル。会長が玲香のために、水とお茶も買ってくれてたの。ほんと玲香、会長に見つけてもらったことに感謝だよ」
あ、なんとなーく覚えてるような……。ベンチに座らせてもらって、お水……飲んだな。あ……飲ませてもらったんだっけ……。会長のネックレスが一瞬私の頬に当たって、ひんやりした感触だけは妙に覚えている。
あの先輩達にあれ以上絡まれていたらと思うと……うん、ちょっと鳥肌立ってくるかも。間一髪だったんだ。
「そうだったんだ……ごめん華音、酔っ払いがご迷惑おかけしました!……早くお
すると華音は、もう玲香ぁ! 時計見て! と笑う。
「今ね、午後3時だよ。今日は午前しか授業ないでしょ、玲香。私と同じの取ってるんだから」
「え?! 待って午後3時?!……華音、授業は?」
「心配ないよ。1時間目は会長、2時間目は京汰くんが私達の分の出席カード、代わりに書いて提出してくれたの。ほんと玲香、会長には頭が上がらないねぇ〜。あ、そうそう、私の家に来たあたりから玲香のスマホ鳴りっぱなしで。お母さんからの鬼電と鬼LINE凄かったから、『玲香ちゃんは体調崩して急遽私の家で泊まることになりました』って言っといたよ。正直に飲みましたなんて言うのもアレかなぁと思って」
華音……あなた容姿に限らず中身も女神……。文句言わずに法律違反の酔っ払いを泊めて、翌朝の授業を休んでまで私の面倒を見て、母親に嘘をさらりと言って完璧なフォローまでくれる優しさ……。
それに引き換え、名前も知らない新歓コンパでブッ潰れた挙げ句、異性の同期に醜態晒して、一人暮らしの友達の家に意識朦朧の状態で転がり込む私……。
私とあなたじゃ、人間性に天と地以上の差があるよ。
「ありがとう華音……本当にありがとうございます……」
「それは全然いいよ。でもお酒は気をつけてね。よく分かんないコンパはきっちり断って! 玲香可愛いんだから、危ないよ」
いや、あなたの方が可愛いです。100万倍くらい可愛いです。と1人心の中でツッコミを入れてしまった。
「はぃ……」
お礼を言うべきは、私じゃなくて会長だよ! あと京汰くん! と言ってキッチンに消え、お味噌汁と卵粥を出してくれる華音は、マジでできたお嫁さんになれるはずです。……あ。私のスマホまで充電完了してる……! もう結婚してください。
さらに、いつも何かにつけてママママ言ってる会長が、あの先輩相手にしてまで私を助けてくれたなんて。その上私をおんぶですか。
……控えめに言って、好感度が急上昇している。ハイパーインフレ。
このメンツへの愛が、一気に深まりました。もうね、一生を捧げます。
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