“よじかんめ”のセレナーデ
#20 幸せって何なんでしょう【篠塚華音】
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まさか、大学で京汰くんと再会するなんて。
今までの人生で1番びっくりした。
本当に、冗談抜きでびっくり。
同じ大学、学部っていうのはあり得たかもしれないけど、あれだけ大きな大学で、必修のクラスまで同じなんて。奇跡に近いと思ったの。
高2になって、京汰くんと急に連絡取れなくなったから気にはなってたんだけど、彼曰く、高校のトイレにスマホを水没させた挙げ句、女子が怖くて私の連絡先を聞き出せなかったみたい。よく男子が「女子怖い」っていうけど、そうかなぁ? そんなにビビることかなぁ? とは思ってる。
結局、その水没事件のせいで、私達は大学で再会するまで、互いの近況を全く知らなかった。京汰くんは帰宅部で部活繋がりなどがなく、周囲も早い人は受験モードに切り替えてたりしていたから、他の友達から彼の様子を伝え聞く、ってこともなくて。
もし大学で出会わなかったら、いつか同窓会でも開かれるまで会えなかったんだろうな、と思うと、この奇跡的な再会があって本当に良かった、と思う。
大学生の京汰くん、高校の時ほどのおバカキャラはまだ開花してないけど、やっぱり人の輪の中心にいる所は変わらない。“よじかんめ”のメンバーはみんな個性的で、でもそれをなんとなくまとめてるのが京汰くん、みたいな? 程良い所でなかなか冴えたツッコミ入れるし、一緒にいてすごく楽しい。彼曰く、まだ始めたばかりのバイト先で、相当ツッコミスキルが鍛えられたみたい。それだけでも、面白そうなバイト先だな〜って思う。
一方の悠馬くんは、「こんなに学生がいたら、1人か2人くらいは僕のこと
大学で、久しぶりに彼の“気”を感じた時は、すっごく嬉しかった。あぁ、また悠馬くんと話せるんだ! って。京汰くんと悠馬くんの掛け合い、好きなんだよね。また見られると思うと、ワクワクするの。
私自身は、高校でずっとバスケをやっていたから(アメリカでもやってたんだ)、大学でもバスケを続けることに決めて。でも陸ほど本格的ではないから、体育会系の部活じゃなくてサークルに入った。
あ、陸っていうのは遠恋の彼氏の名前!
大学のバスケサークルは週2であって、ゆるーくバスケした後ご飯食べに行くっていう何ともアットホームなサークルで。正直にいうと、今は1人暮らしだから、先輩にご飯連れてってもらうと食費が浮いてラッキーなんだよね。その分来年が恐ろしいけど……。
両親は仕事の関係で帰国するメドが経ってなくて、私だけマンションの1部屋を借りて1人暮らし中。サークルでは、1つ年上の
初めて話したのは、入会金を渡す時。
高校時代の癖で「岩田先輩」と呼んだら、「ここサークルだからもっとリラックスしていいんだよ! 杏南で大丈夫!」と言ってくれて、そこから杏南さんって呼んだら、私のことは「のんちゃん」って呼んでくれた。初めてのあだ名でちょっぴり、いやかなり嬉しい。ふふっ。
そんなこんなで、おかげでキャンパスライフは楽しく過ごせてる。
一方、恋愛の方は——
実はまだ、大学に入ってから陸とは会えてない。そろそろゴールデンウィークも終わるんだけどね。連休中は、陸の大学の水泳部で、新歓合宿があったみたいで。電話とかの連絡は取り合ってるんだけど。でもまだ会う日程のメドも立ってなくて。
のろけるわけではないんだけど、ってまぁのろけちゃうんだけど、陸のことは好き。周りを一気に明るくしてくれて、でも感情表現もちゃんとしてくれて、思いやりのある人で、追加でイケメン。
陸は塩顔爽やか男子。転校生でなじむのが難しかった私にたくさん話しかけてくれて、クラスに溶け込むきっかけを作ってくれた人。嫌な時は嫌だって言ってくれる人。
私、恋愛において束縛を全くしないタイプで、もはや軽く放置しちゃう所があって。実は連絡不精なとこもあるし。それが陸は気に入らなかったみたいで、受験期直前に喧嘩したの。意外でしょ? 私、恋したらめっちゃ束縛して、彼しか考えられない! みたいな人に見えるらしいの。でも今は陸の影響で私もだいぶ変わって、1日3回くらいはLINEして、週1で電話するようになった。
ただ、私はそれで満足してしまっている。恋愛はあれば幸せ、つまり人生のオプション、っていうのが私のスタンスだから……。
でもきっと、陸は不満なんだろうな。新歓合宿が終われば、会いたいという連絡がまた来そう。
会いたくないわけじゃないし、会えば楽しいし好きなんだけど、何て言えばいいんだろう……。陸からの好意に対して、「嬉しい、でもちょっと待って!」みたいな感覚がどうにも抜けない。
好きって、なんなんだろう。
価値観って、なんなんだろう。
恋とは? 愛とは?
幸せ、とは?
恋愛すると、どうしてもこういう哲学的な考えが頭をよぎってしまって。
私は今日も、うまく眠れない。
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