#3 身長マジックとカッコつけ
そうして高1の3学期から、華音様のいないモノクロの日々が始まってしまった。年末年始のタイミングで帰国した父にも、「お前
華音様とはLINEを続けていたけど、そうコンスタントには続けられなくなった。なぜって?
——時差よ。こっち起きてる時に向こう寝てて、こっち寝てる時に向こう起きてるわけ。最初は頑張って華音様の時間に合わせて電話もしてたんだけど、数日で死んだ。授業中は沈没、小テストは撃沈。俺が夜寝てる隙に悠馬が勝手に俺のスマホで華音様と電話したらしく、その次に華音様と話した時には「京汰くん、無理しなくていいからね!」と言われてしまった。高2を控え、大学受験も考えないといけなかったから、この時は素直に華音様の言うことを聞いた。
そして進級と共に、また大事件が起こったんだ。
それは——人生史上ほぼ最大のモテ期。俺の人生には再び彩りが添えられ始めた。
何がすごいって、クラス替えした途端よ? 週1で告られ始めた。「藤井くん……実は前から少し気になってて!」とか「面白いし、よく見るとかっこいいし……」とか。1人テニス部の後輩とかいた。俺帰宅部なのによ? どうもテニス部の城田とつるんでる所を見られたらしいけど。もう訳が分からん。まぁ1つ心当たりがあるのは、高1から高2の間の春休みに身長が5cmくらい伸びたことかな。元々低くなかったんだけど、急に180cmになった。そしたら急にモテ始めた。これには悠馬もびっくりしてたな。身長マジック。
当然最初は俺の方が舞い上がってしまって。でもまだ心にはしっかり華音様が残っていたから、「ありがとう。でも俺、今彼女とか作る気ないわ……ごめんな」とかすんげぇキザな振る舞い見せてた。うわぁ今思い出すと寒気しかしない。はっっず。いやあのね、ちょっとね、みんなの憧れ皆川先輩的な雰囲気真似したかったんだよね。バスケ部きっての超絶イケメンの
ただこうしたカッコつけマンの日々も、予想外の形で終わりを告げた。
「……ちょ、うわ、あああああっっっっっ!!!」
スマホを落としました。……学校のお手洗いに。
こういう所、俺やっぱバカの素質あるって思ってる。俺にはカッコつけマンなんか似合ってねぇんだよな。分かってたよ、うん。調子乗ってた。
水没したスマホは見事に機能不全に陥りまして。俺は放課後慌てて携帯ショップに行き、新しいスマホを買った。ここまでは良かったはずなんだけどさ。
次の瞬間、気づいたのであります。
LINEのバックアップ取ってねぇじゃん、と。アカウントの引き継ぎとかしねぇまんまにインストールしちゃったじゃん、と。
クラスとか仲良しメンツのLINEとかには招待してもらえて入れたんだけど、肝心の華音様のアカウントどこやねん。
きっと華音様のお友達(女子)はアカウント知ってたけど、聞いたら怪しまれそうだし。俺の周りの男どもは芋の極みで、華音様を友達追加すらできてねぇし。俺の周りはジャガイモとサツマイモとサトイモとタロイモしかいねぇんだわ。
そんなわけで、華音様と俺を繋ぐものが何1つ無くなってしまったのです。SNSの繋がりって思った以上に
そしてさらに追い討ちがかかった。
俺がスマホを新調した数日後、クラスの女子が盛り上がっていた。
「華音超可愛い~♡」
「アメリカでも元気そうで良かったよね!」
はっ?! 何を見てるんだ?! 俺は彼女たちの輪を覗き込んだ。すると……写真があるではないか。LINEで送られてきたらしい。相変わらず美しい華音様の隣には、さらに美しいAmerican boyがいた。え。何このイケメン。てか距離近くない?! 腰に手添えられてない?!
「華音、クラスでウェルカムダンスパーティー開いてもらってたんだね!」
「えーペアになった男の子はライリーって言うんだ!」
「それが華音の隣の子じゃない?」
「ま?!」
「うわやばっイケメン。はい昇天」
ら、ライリーくんとダンス……もう俺の知らない世界に足を踏み入れたんだな、華音様は……。
その写真を盗み見て、俺の心はプッツン、と切れた。
あ、全く怒ってないのよ? 華音様にもライリーくんにも全くムカついてない。
ただね、悟ったのよ。
華音様は新しい一歩を踏み出したんだって。俺の時計だけが止まってたんだって。
そんで決めたの。
せっかくモテ期が来てるんだもの。彼女作ろうって。
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