037 御株
―――さて…どうくるか…。
―――…やっぱり来たっ!
画面が薄暗くなり、わずかに
『
対俺専用技とまで言われてしまった技。時間はかかれど体力ゲージを3分の1も削られてしまう。しかも回避不可という、俺にとっては
しかし、対策法は見つかった。
「苦悶の霞」は、対象を状態異常…
――――――自分から状態異常になれば良いんですよ!
最初聞いたときは、何かの
しかし、これが答えだった。
ところで、FPSの技には、そのすべてにアニメーションがつけられている。「
俺ならねじ込める。
『おーっと!マイケル選手が
実況さんの声を追うように、俺が発動した技がカットイン。普通ならばありえない光景に、会場から悲鳴にも似た声が上がる。
『
俺に状態異常のアイコンがつく。もっともこれは「苦悶の霞」によるものではない。俺が使用した技「背水の狂焔」によるものだ。
―――状態異常になるだけなら意味ないけど…。
もちろんそんなデメリットだけの技ならば、いくら俺でも使わない。もちろん、追加効果がある。自ら状態異常に
『
そう、毒状態になっているキャラクターに、さらに毒状態にする…なんてことはできない。既に
同じ状態異常が重複することは、基本的にありえないのだ。
「…!」
想定外の対応だったのだろう。マイケル選手の動きがわずかに止まった。俺でなければ気づかなかったかもしれない。それほどに僅か。
『風乱れて桜
自分から攻撃を仕掛ける。カウンターを基本とする俺にとって、結構勇気のいる決断。しかし、チャンスを目前に
―――当たってくれ…。
一連の動きが終わるまで、任意の操作はできない。相手は既にガード体勢に入っている。俺にできることは、ただ見守ることだけ。
ガードの残り時間を示すバーが、じりじりと削れていく。あとコンマ1秒。春霞一閃の切っ先が、わずかに顔を出した。
『ファーンタスティーックッ!ダイキ選手の
会場のボルテージに合わせるかのうように、対戦が加速する。「苦悶の霞」を回避したことが
『
カウンターを決めたいところなのだが、ここは冷静に進める。大技は
―――…と、まあ。頭ではわかっているんだけどね…!
右の親指に力をこめる。
回避を続けることが勝利への最善手。それは間違いないのだが、理論が感情に負ける瞬間なんて
『
押しきる。
『風乱れて桜降る…
―――…ん?
マイケル選手、ガードを発動していない。あきらめた…わけではない。これは。
―――カウンター…か。
最後の最後、まさか
―――プロ…すごいな。
『決まったーっ!最後は春霞一閃!勝者…ダイキ選手!』
一回戦、突破。
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