第三章 世界から世界へ
036 世界
世界大会初日。会場の
―――いよいよだ…。
世界大会ということで、父さんも有給とってかけつけてくれた。関係者席には、父さん、母さん、
FPSが世界三大大会の一角を担っているのは知っていたが、改めてその人気を思い知る。
ネットでいろいろと調べてみると、その人気の秘密は「無料プレイ」にあるらしい。日本に設置されている
―――日本でも無料にしてくれたら良いのに…。
まあ、そう思わないこともないが、これは経営判断。俺が口出せることではないのだが。
そのような気軽にプレイできる
――――――ダイキ先生、感動しました!
こっちに来て以降、いろいろな方から声をかけられた。そのうちの一つ。とっても嬉しかったし、格好よくしなければとも思った。
今、俺はプロゲーマーとしてこの場に立つ。もちろん大量のスポンサーがつくトッププロと比べれば、吹けば飛ぶようなレベルでしかない。ただ、それはギャラリーさんには関係のない話なのだ。いかにして勝つか。真剣勝負のなかから、想像を超えるエンターテインメントをお届けしなければならない。それがプロ。
―――さてと…そろそろ戻るか。
試合開始まで少しあるので、控室でうろうろ。
世界大会では、場外戦や不正を防ぐ目的で、選手どうしの接触が禁止されている。日本からはカナ選手も出場しているのだが、飛行機の便がわけられるほどの徹底ぶり。というわけで、ここは個室。
「ダイキ選手、まもなく試合開始です。ステージへお願いします。」
「はい。」
緊張感はほとんどない。語
―――…1フレームの世界へ。
■
『さあ、いよいよFPS世界大会…第1戦の始まりだ!』
会場の熱量が上がる。音楽や照明が切り替わる様子は、まるで嵐の前の静けさと言ったところ。
『FPS大会初出場にして、日本大会優勝を飾った…彼の放つカウンターはもはや芸術の域。我々を魅了し、そして困惑させたそのスキル。
いつもより体が軽く感じる。
花道の先には見慣れているはずの
―――やっぱり緊張はしてるんかな…。
昨日リハーサルで見ていたはずなのに、会場を彩る飾りや照明を新鮮に感じてしまう。思考よりも身体が先に動いているような、不思議な感覚。
『対するは…こちらも世界大会初出場。プログラマーとして活躍する
表情一つ変えずに歩むマイケルさん。スポンサー企業のイメージカラー、
―――むぅ…。
気迫で押し込まれてしまわないように、背筋を伸ばして胸を張る。俺は今、日本大会に出場したすべての選手を代表してこの場に立っている。
握手。
席について深呼吸。
―――さあ…始めよう。
『観客のみんな…一瞬を見逃すな!…レディー…ファイッ!』
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